旧ソ連・東欧共産党政権がまだ勢いがあった時、彼らは、エイズ問題、同性愛問題、離婚、家庭の崩壊といった社会の“負の現象”は欧米資本主義社会特有の病と断言し、共産主義世界にはそれらの問題は存在しないと豪語してきたものだ。しかし、旧ソ連・東欧諸国の民主化後、それらの社会の負の現象は共産党政権下にも存在したことが暫時明らかになっていった。
ところで、共産党一党独裁を続ける中国共産党政権が党を挙げ離婚対策に乗り出すということは、中国で離婚問題が国の命運を左右する深刻な社会問題であることを裏付けている。
中国反体制派の海外メディア「大紀元」によると、「中国国内の離婚率は急増している。2002年から13年までに結婚したカップルが71%増えたのに対し、離婚したカップルは197%増えた。2013年には350万組の夫婦が離婚し、前年比12.8%増となっている」という。
そこで中国の非共産党員の政党国民党の革命委員会は離婚を減らす法案を全人代で提出する予定というのだ。法案の対象は幼児を抱える夫婦に限るという。ただし、法案一本で増加する離婚をストップできると考える指導者も国民もさすがに少数派だ。
大紀元は、「横行する不倫に法的制裁が必要。不倫が恥だと思う人が少なくなっている」、「離婚の手続きを簡素化すべきだ。愛のない結婚を続けても子どもにとって良いことはない」、「離婚はやはり夫婦間の問題で、当事者同士で判断すべきだ」という代表的な3つの声を紹介している。
当方はこのコラム欄で愛人を囲む共産党幹部が増加してきたと報じた。中国政府機関で昨年発覚した女性問題は70万件を突破し、うち21万7700件は法廷争いに持ち込まれたというのだ。
一党独裁の共産党幹部が愛人を抱え、不法な資金を海外に保管する傾向はもはや新しくはないが、経済が豊かになるのにつれ、国民の間にも不倫が横行している。共産党幹部の腐敗が国民にも反映し、社会自体が不倫横行の堕落風潮を生み出したとしても不思議ではない。
ちなみに、旧ソ連・東欧共産党政権時代、想定外の社会問題や政治問題が発生する度にそれに対応するため新たな“委員会”が設置されたものだ。共産党政権下では無数の委員会が設置され続けていったが、問題の解決をもたらさなかったことは歴史が証明している。
中国共産党政権下では、法で家庭問題を解決しようと腐心しているわけだが、委員会設置と同様、実質的な解決をもたらす可能性は少ないのではないか。
中国共産党は1979年、「独生子女」(一人っ子)政策を強行したが、その計画出産がさまざまな問題を生み出してきたことは周知の事実だ。そこで2013年11月の中国共産党第18期中央員会第3回全体会議で基本方針を堅持する一方、夫婦の片方が一人っ子の場合、二子を認める「単独二胎」政策を打ち出している、といった具合だ。
離婚を法的に規制する動きは短期的には一定の効果が期待できるかもしれないが、長期的にはやはり無理があるだろう。ただし、国民の家庭問題、愛の問題を法だけで規制できないことは中国共産党政権だけに限ったことではない。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。