三原じゅん子氏の良識を疑う

北尾 吉孝

YouTubeでも『三原じゅん子 日本が建国以来大切にしてきた価値観「八紘一宇」』が閲覧できますが、麻生太郎さんの言われたのと同様に私自身も今時分に若い人から此の言葉が出てきたことに今回大変な意外感を持ちました。


国語辞書を調べて見れば、八紘一宇(はっこういちう)とは『《神武紀の「八紘をおほひて宇(いへ)とせむ」から》全世界を一つの家にすること。第二次大戦期、日本が海外侵略を正当化する標語として用いた』と書かれています。

そういう意味では、此の八紘一宇の大原則に基づいて植民地化された国々を助けるべく軍隊を送るという、戦前日本の軍国主義とある種非常に結び付いたイメージを内包した言葉だと言えるものでありましょう。

安倍晋三首相より今夏発表される「戦後70年談話」を巡って「戦後50年の村山富市、60年の小泉純一郎首相談話の表現を踏襲する」か否かの類が、これだけ盛んに叫ばれているようなタイミングでこうした言葉を持ち出すのは如何なものかと思います。

今月に入っても8日、王毅外相が「70年前に日本は戦争に敗れた。70年後に良識を失うべきではない」と話され、また15日には李克強首相が「一国の指導者は(中略)先人の犯罪行為がもたらした歴史の責任も負うべきだ」と発言されたように、今中国は此の談話に目くじらを立てている状況です。

三原氏は今朝、御自身のブログで「予算委員会の質問でお伝えしたかったこと」を書かれていますが、今回問われるべきは八紘一宇の考え方自体の是非云々という点ではなく、戦前日本・軍国主義・侵略戦争といったイメージを非常に強く喚起し、その時代日本の戦争行為の正当化に結び付いた言葉を今更ながら「あえて」持ち出し、戦後70年目の年にわざわざ隣国を刺激する必要はなかったのではないかということです。

此の八紘一宇というスローガンは如何なる時代背景の中で国民全部に行き渡った言葉なのか、そして今とりわけ日中韓三国関係を世界中が注視し戦後70年を迎えている此のタイミングでこうした言葉はどのような反響を齎すのか。

一昨日、三原氏は「この八紘一宇という根本原理の中にですね、現在のグローバル資本主義の中で、日本がどう立ち振る舞うべきかというのが示されているのだと、私は思えてならない」と述べられましたが、三原氏に小生としてはグローバル資本主義の本質とは如何なるものか御聞きしてみたいと思いました。また、こうした言葉を「良識の府」の予算委員会で大声を出して言わなくても良いのではないかと思いました。

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