「どの人生にも『意味』がある」 --- 長谷川 良

アゴラ

オーストリアの精神科医、心理学者、ヴィクトール・フランクル(Viktor Emil Frankl,1905~1997年)が生まれて今月26日で110年目を迎えた。ジークムンド・フロイト(1856~1939年)、アルフレッド・アドラー(1870~1937年)に次いで“第3ウィーン学派”と呼ばれ、ナチスの強制収容所の体験をもとに書いた著者「夜と霧」は日本を含む世界で翻訳され、世界的ベストセラーとなった。独自の実存的心理分析(Existential Analysis)に基づく「ロゴセラピー」は世界的に大きな影響を与えている。その心理学者の功績と生き方を紹介した世界初の博物館が26日、フランクルが戦後長く住んでいたウィーンの住居でオープンされた。


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▲1950年代のヴィクトール・フランクル(ウキぺディアから)

ロゴセラピー(Logotherapy) は、人が自身の生の目的を発見することで心の悩みを解決するという心理療法だ。フランクルは、「誰でも人は生きる目的を求めている。心の病はそれが見つからないことから誘発されてくる」と分析している。強制収容所で両親、兄弟、最初の妻を失ったフランクルだが、その人生観は非常に前向きだ。彼の著者「それでも人生にイエスと言う」やその生き方に接した多くの人々が感動を覚える理由だろう。

ウィーン大学の「ヴィクトール・フランクル研究所」のHPによると、フランクルの実存分析は3つの哲学的、精神分析学的コンセプトに基づく。
* Freedom of Will
* Will to Meaning, and
* Meaning in Life

「ロゴ」はギリシャ語で「意味」だ。全ての現象に「意味」があり、その意味を汲み取る作業が人生であり、見つけた人生の目的を成就していくのが人生というのだ。

ローマ・カトリック教会の前ローマ法王べネディクト16世は現代人の心の世界について、「多くの人々は相対的価値観に陥り、何が価値あるかを分からなくなってきている。そのような世界の行き先は虚無主義だ。現代人は虚無主義に陥る人々が多い」と述べたことを思い出す。私たちは生きる価値、意味が分からなくなる時代に生きているのだ。

フロイトの無意識の世界、性衝動などの精神分析、アドラーの「個人心理学」とは違って、フランクルの精神分析は人間の実存に基づく分析といえる。物質世界の恩恵を受けながら心の渇きを感じて悩んでいる現代人にとって、フランクルの心理分析は大きな救いをもたらすはずだ。フランクルは、「あなたの人生にも意味があるのだ」と囁き、悩める人々の心に光を与えているのだ。

最後に、フランクルの言葉を紹介する

祝福しなさい、その運命を。
信じなさい、その「意味」を。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。