これは人気者になること請け合いです。何がといえば、中国で20年ぶりに撮影された幻のウサギ「イリピカ」(The Ili pika、Ochotona iliensis、イリナキウサギ)。作り物のヌイグルミかと思うほどの「できばえ」です。報じたのは「ナショナルジオグラフィック誌」で、中国北西部の山中で撮影に成功。前回は1983年に新疆ウイグル自治区で目撃され、それ以来の出現です。
20年ぶりに撮影されたイリピカ。Photograph by Li Weidong
このイリピカ、体長は約20cmほどで、ウサギ目ナキウサギ属の草食動物です。絶滅危惧種で希少であり、また夜行性のため、発見されることは難しかった生物でした。1990年代には推定で2000頭ほどが棲息していた、と考えられていますが、その数はどんどん減っているらしい。原因は、開発による生息域の激減と中国名物、大気汚染のせいだそうです。
それにしても中国には、ジャイアントパンダ(melanoleuca)やレッサーパンダ(Ailurus fulgens)、キンシコウ(Rhinopithecus roxellana)、マヌルネコ(Otocolobus)など、まるでアニメに登場するような動物が多い。この愛くるしいイリピカも仲間入りは必至。名前も際立ってるし、いかにも日本で人気が出そうなキャラです。
これはマヌルネコ。こんな体型で果たして自然環境を生き抜いていけるのか。Photography by Abujoy
POPULAR SCIENCE
China’s Endangered ‘Magic Rabbit’ Photographed For The First Time In 20 Years
Antarctica’s Supersized Icebergs Shut Down Currents
livescience
南極の巨大過ぎる氷山が、海流を堰き止めている、という記事です。極地の海洋では、海水の塩分濃度などの割合により、塩分の薄い重い海水が深海へ潜り込む、いわゆる「低層水」と呼ばれる動きがあります。こうした深層循環は、地球規模の気候変動に大きな影響を与えると考えられ、とりわけより重く冷たい南極の低層水は北極の2倍の量になる。しかし、2010年までに南極海に存在したルクセンブルクと同じ大きさの巨大氷山は、低層水の流れを堰き止め、プランクトンの繁殖を阻害し、周辺の生態系にも大きな影響を及ぼしました。今回、明らかになった結果をもとに、研究者らは今後、巨大氷山と海流、そして気候変動や生態系との関係を調べていくようです。
2586平方kmのルクセンブルクとほぼ同じ大きさのメルツ氷山。Credit: NASA Earth Observatory
Study: Prices of cancer drugs have soared since 1995
EurekAlert!
抗がん剤の価格が1995年から高騰を続けている、という記事です。これは、年10%という、物価上昇のスピードをかなり上回る上昇率で、どうしてこうなっているのかには諸説あるようです。何かの価格が上がる、という背景の一つには、たとえば需給ギャップがありますが、医薬品の場合は行政や社会的な圧力などにより需給バランスによる極端な価格変動は起きにくい、と考えられています。にも関わらず、これほど抗がん剤の価格が急騰するのはなぜなのか。この記事では、新薬開発のコストを価格に反映させる圧力が強まり、社会的にそれが許容されるようになっているのかもしれない、と書いています。
What Does Obama Want From Netanyahu?
SLATE
安倍首相がイスラエル訪問時に、日本人の人質事件に関する記者会見をしました。その際、日本国旗とイスラエルのダビデの星の国旗に挟まれて会見に臨んだことが批難されたりしたわけです。もっとも、他国で行った公式記者会見なので、その国の国旗が立てられるのは普通。場所を選べなかった、というだけです。一方、先日のイスラエル国政選挙では、どちらが勝つか予断を許さないまま、フタを開けてみると地滑り的に右派のネタニヤフ側が勝ちました。ネタニヤフ側は2年以上も前倒しして総選挙へ打って出た。その戦術が奏功した、とも言われ、何やら安倍政権との共通点も見え透いてきます。また、いわゆる「イスラム国(IS)」の世界の耳目が注がれている間、イスラエルはパレスチナへ対する圧力を強め、こうした状況がイスラエル国民の態度を右派支持へ傾かせた。逆に、反ユダヤ感情が高まっている欧米では、パレスチナへのシンパシーからイスラエルの政策に対する批判が強まっているようです。
Hints of huge buried impact craters reported in Australia
nature
これは、なかなか示唆に富む発見です。おそらく3億年以上前に落下した巨大隕石の墜落痕がオーストラリア中部のウォーバートン盆地で発見された、という記事。約400kmにもおよぶ長い落下痕があったらしい。クレーターは長い年月の風化でなくなっていましたが、約3000mの地下にそれらの跡が残っていました。ちなみに、恐竜を絶滅させた主因と考えられているメキシコ、ユカタン半島の隕石クレーターの直径は約180kmです。この隕石の落下時期は、3億5920万年前から2億9900万年前までの石炭紀。石炭紀末にも大絶滅がありましたが、これは氷河期で気温が下がったせい、とされてきました。しかし、今回の隕石が石炭紀末の大絶滅に関与した可能性は低いようで、落下時期はもっと前かもしれない、と研究者は語っています。
アゴラ編集部:石田 雅彦