いよいよ統一地方選が始まった。特に注目されるのは「大阪都構想問題」を抱える大阪の行く末で、ニュース報道によれば街頭演説もこの問題一色らしい。
大阪支部長として応援の先頭に立った自民党の竹本直一、民主党の辻元清美両代議士は、いつもの対立は何処へやら今回の選挙では、一致して「大阪都構想反対」を連呼しているらしい。
「大阪都構想」反対で一致したお二人の「大阪の未来構想」はどんな物があるのかに興味を持ち、出来るだけ多くのニュースを検索したが何も見つからない。
そこで、お二人の公式WEBを覗いて見たが、「都構想」の「都」の字も出て来ない事には正直驚いた。
辻元清美議員の「理念と政策」は、「宝塚の入学の誓い」のような「仕事をつくる」「暮らしを守る」「中小企業、商店の仕事を守りたい」等の、情緒的願望を並べたもので「大阪都構想」には全く触れていない。
竹本直一代議士のWEBは、さすが国交省出身だけあって「リニア新幹線の東京―大阪同時開業の強力推進!」「ふるさと南河内に『環状高速道路網』を整備!」「内需振興の充実で中小企業の活力みなぎる大阪に!」等々、土木・建設関係の公共投資の約束のオンパレードだが、ここにも「大阪都構想」問題は不在であった。
要するに、このお二人は「理由は無いが大阪都構想反対」で一致したと言うお話で、「税金を使って色々やります」と言う一昔前の「公約政治家」と言う点でも共通している事が分かった。
これだけ「大阪都構想」に無関心なお二人だが、国策では何か一致している事があるのか? 疑問に思って検索を進めると:
「憲法改正」「集団的自衛権の行使」「原発再開」「女性宮家」「永住外国人への地方選挙権付与」「慰安婦問題」など重要政策では悉く正反対の主張をしている事もはっきりした。
これでは「竹本はん、辻元はん、あんたらどっちを向いとんねん」と、大阪人が疑問を投げかけたとしても当然である。
橋下徹氏が2008年2月に大阪府知事に当選して政治の舞台に登場して以来、早いもので7年の歳月が経った。
この間、「毀誉褒貶相半ば」と言うより「毀貶」7割、「誉褒」3割と言った方が良い強い批判を浴びながら、激しい地盤沈下で全国的には忘却の彼方に消えつつあった大阪の問題を、全国問題に格上げし、議員数53名を擁する国政政党「維新の党」に発展させた橋下氏が、稀にみるやり手の政治家であることを否定する人は少ないだろう。
賛否は別にしてその中心課題が、「大阪都構想」であった事も間違いない。
このように個性の強い橋下氏だが、大阪の地方選は橋下氏への人気投票ではなく政策投票であるべきで、「大阪都構想」は一つの構想に過ぎず、「対抗する構想」は多ければ多いに越した事はない。
問題は、「都構想」に代る「構想」の存在が見えず、あるのは「抗争」ばかりだと言う現実だ。
しかも抗争を仕掛けた相手が「都構想反対」の一点では一致する物の、その他の政策では悉く対立する自民党、民主党、共産党とあっては、野合と言われても致し方ない。
繰り返すが「大阪都構想」を支持する必要はない。
ただし、「都構想反対派」がそれに代る「構想」を作れないなら、少なくとも「現状維持支持」を高く掲げ、選挙民が選択しやすい形で投票出来るようにすべきで、理由もなく「反対に賛成しろ」と訴えるのは選挙民を愚弄するのも甚だしい。
かつては日本経済の一大中心地であった事もあり、豊臣政権下では事実上の首都機能を有した事もある大阪は、捨てたものでは無い筈だ。
西日本経済再浮揚の為にも、大阪の選挙民は好き嫌いではなく、「政策」を巡っての選挙で頑張って欲しいと願うのみである。
2015年4月7日
北村 隆司