韓国の外交政策は何処へ

岡本 裕明

一時の強気なボイスが明らかにトーンダウンしているというのが私が見続けてきた韓国の日本に対する姿勢であります。産経新聞の加藤元支局長が出国禁止解除になったことに「本件と外交は関係ない」と言いつつもある大きな流れの中で方針変更になったと想像に難くありません。

では何がそうさせたのでしょうか?


私にはアメリカのスタンスが一つ影響していると考えています。オバマ大統領やホワイトハウスは日韓両国がしっくりいっていないことに長らくいら立ちを見せていました。「なぜ君たちは対話すらできないのか?」と。アメリカは当事者国ではありません。あくまでも仲裁には立てますが、解決する努力をみせるのは君たちだ、という明白なメッセージがあったとみてよいでしょう。

安倍首相はそれゆえ、首脳会談はいつでもウェルカムという姿勢を示し、積極的にアプローチを続けました。が、韓国側は歴史問題あるいは慰安婦問題の解決が先という姿勢を長らく示し続けてきました。少なくとも先の外相会議で話は平行線であったものの対話がなされたという点において両国間の関係は進歩したと当時の本ブログで指摘しました。それは逆に言えば韓国側が対話のテーブルにつかなくてはいけない状況になったともいえます。

北米に長い私が見る白人の問題解決の方法の一つは徹底した対話、討論、議論を通じて双方の論点を一つずつ潰し、双方がどう発展的解決できるかを探ることです。ロシア問題でもウクライナ問題でもギリシャ問題でも関係各国の首脳があたかも社内会議のようにすぐに集まりすぐに討議のテーブルに着くそのフットワークの良さに多くの人が気がついていると思います。

あるいはリーマン・ショック、欧州通貨危機の際、多くの首脳や関係トップが頻繁に顔をそろえ、徹夜で言い分を主張し、議論し、その中で解決策を見出してきました。つまり、対話すらしないという発想そのものが理解しがたいものであるのでしょう。

カナダ バーナビー市で建立計画のある慰安婦像。4月15日付の同市長名のプレスリリースで本件は日韓コミュニティで討議を行い、建設的な解決方法が出るまで凍結すると発表されました。まさに対話ありきの判断がここでも出されたということであります。

韓国の姿勢が軟化した一つの理由に4月末の安倍首相の米国議会での演説が実現するためとするメディアもあります。しかし、朴大統領がそれを羨ましいと思うなら安倍首相も朴大統領が習近平国家主席との会談を歓迎されたムードで行うことに嫉妬したかもしれません。それはあくまでも外交の問題であり、それが主因ではないでしょう。

むしろ朴大統領が取る外交政策が中国寄りなのか、アメリカ寄りなのか、またいいとこ取りなのか、その中途半端さが生んだ詰将棋のようにも見えます。また、それは朴大統領だけが誤ったわけではなく、朝鮮半島の長い歴史そのものであるともいえます。逆に言えば地政学的にも思想的にも中国とは切っても切れない状況にある中で時として究極の選択を要求されることに政策運営の難しさを見出すことができます。

韓国のもう一つの特徴は政府と国民の温度差でしょうか?国民は非常に熱いものを持っており、政府高官や政治家を糾弾するのはごく日常的であります。しかし、私が感じる韓民族は時として政府や国民の中ですら利害関係が一致せず、時として殴り合いの喧嘩で落とし前をつけることすらある中で政府方針が突然変わったとしても国民がそれに従えないこともあるもう一つの難しさを見出すことができます。

これはもはや国民性の話ですからこれ以上は立ち入りませんが、私は財閥解体を一度徹底して行い金融機関を強化し、極端な格差を是正した方がよいように思えます。一方で北朝鮮と緊張関係が続き、いざとなればソウルはロケットが何時でも飛んでくる状況をどう解決するか、そちらはもっと悩ましい韓国の政策と言えそうです。

端的に申し上げるとこれほど外交と国内政策が難しい国は世界の中でも少ないでしょう。ただ少なくとも今は日韓関係は大きく改善の方向に舵が切られているのですからこのタイミングを日本は大事にすべきだと考えています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本 見られる日本人 4月16日付より