アメリカで、最低年収840万円の企業が出現へ! --- 安田 佐和子

アゴラ

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マクドナルドが従業員の賃金を10%引き上げ、時給を約10ドルとする計画を発表したのを覚えていますか?所得格差が叫ばれて久しいなか、各州で最低賃金を徐々に引き上げるなどアメリカではゆっくりと是正が進められています。


底上げするには余りにのろい進みに辟易したのか、この企業は3年かけて段階的に最低年収を5万ドル(約600万円)から最大7万ドル(約840万円)へ引き上げる方針を発表しました。受付から事務員、営業にいたるまで、全従業員が対象です。

一体、どんな会社が賃金格差を解消し理想郷を実現するというのでしょうか?予想通り、大企業ではありません。従業員120名の決済サービス会社グラビティ・ペイメンツです。決断したのは、創業者で最高経営責任者(CEO)のダン・プライス氏。13日の朝、従業員がプライスCEOの発表を受けを拍手喝采の渦に巻き込むのには少し時間がかかってしまいました。あまりに突然のビッグ・ニュースは現実離れし過ぎており、聞いてすぐ茫然となるのは当然です。グラビティの平均年収は、4万8000ドル(約575万円)ですから。大胆な賃上げにより従業員の70人が昇給し、そのうち30人の所得は倍増するといいます。

出所のひとつはズバリ、プライス氏の懐。賃上げを捻出するため、自身の年収を100万ドルから7万ドルへ引き下げるんです。仮に売名行為であったとしても、身銭を削る決断には脱帽ですね。

プライスCEOにとっては、93%の賃金カットを意味します。
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(出所:Gravity Payments/Facebook)

その他、今年分については2015年に計上する予定の利益220万ドルを充てるといいます。このニュースを伝えたニューヨーク・タイムズ(NYT)紙によると、CEOと従業員平均との給与格差は300倍なだけに、プライス氏の決断は果敢な挑戦と言えるでしょう。

ところで、7万ドルという数字はどこから弾き出されたのか?答えは、プリンストン大学のエコノミスト、アンガス・ディートン氏と心理学者のダニエル・カーンマン氏が共同研究したレポートにありました。両氏によると人々が最も幸福感を得られる給与水準こそ、7万5000ドル(約900万円)なんです。

ひと口に7万5000ドルと言っても、所変われば品変わる。物価も変わるわけですから、州ごとでばらつきが生じるはずですよね?ビジネス・インサイダーが研究結果と地域経済調査評議会のサーベイを元に作成したインフォグラフィックをみると、ご覧の結果になります。最も割安な州は、ミシシッピ州で6万4000ドル(約770万円)でした。

最も割高なのはNY州で、10万4300ドル(約1250万円)也。
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(出所:Business Insider)

全米で一番富裕層が多い都市を抱えるカリフォルニア州は3位で、9万2000ドル(約1100万円)、同じく2位のワシントンD.C.も9万5600ドル(約1150万円)と続きます。やっぱり、お金が集まるところの生活費はどこより上振れしやすいですよね。

(カバー写真:NBC)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年4月15日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。