今週のメルマガの前半部の紹介です。業績の低迷が続く日本マクドナルドですが、突然、賃金見直しを進めるとのリリースを出し話題となっています。複数の社内等級の賃金を引き下げるとのことで、業績低迷にともなう賃下げの一環だという報道もあります。
ただ、人事に携わる人間なら「おや?」と思ったはず。というのも、業績低迷時に一般従業員の基本給にメスを入れるというのは、実に終身雇用的な発想だからです。
終身雇用型組織の場合、トップはもちろん一般従業員も同じ運命共同体のメンバーですから、業績悪化時にはバシバシ賃下げされることになります。「俺は悪くない、悪いのは経営陣だ」と不満に思う人も多いですが、会社に下駄を預けた以上はしょうがないですね。
一方、同じ日本でも、職務給型で流動性の高い業種では話は別です。たとえばコンビニのバイトは性、年齢、学歴関係無しに「レジを打ち、商品を並べる」という職務に対して時給が支払われる職務給ですが、ampmが「今期はちょっときついから時給下げさせてね」なんて言うことはなく、ちゃんと同じ地域にある業界首位のセブンイレブンと同じ時給を払っています。仮に時給下げたりなんかしたら皆辞めちゃいますからね。
いつも言っているように、本来、流動性こそ労働者にとって最大の武器です。経済のパイ全体がどんどん拡大し続けた時代なら流動性という名の武器を使う必要は少なかったでしょうが、これからの時代、優秀な人材は積極的にそれを使っていくべきでしょう。出来る人間がダメな組織に付き合う理由なんてないですからね。
さて、そう考えると、マクドナルドの狙いは全く別のところにあるとみていいでしょう。それは恐らく、固定費を減らすという守りの一手ではなく、米国本社型に近い賃金制度に切り替えることで組織内の新陳代謝を促し、競争力を高めようとする攻めの一手だというのが筆者の見方です。そういう点では日経の記事の方が本質を突いていると考えます。
以降、
これからマックで起こること
マックはなぜダメになったのか
筆者がマックの迷走が続くと予想するワケ
Q:「ゆとり新人が手にあまるのですが……」
→A:「そのうち社会は彼らがマジョリティになるのでお客様目線で分かり合いましょう」
Q:「彼女の年収が2倍近いんですけど、幸せになれますかね?」
→A:「『あたしにバイトさせるくらいなら腎臓売れ』っていう嫁よりは幸せになれるはずです」
雇用ニュースの深層
日本はデフレではなかった?
仮に日本がデフレではなかったとすれば、壊れたスピードメーターを見ながら必死にアクセルをふかしているという恐ろしい事態が想像できます。
2014年度の賃金は前年割れだった?
むしろ、企業の人件費コストは増加傾向にあり、減っているのは手取りだというのが筆者の意見です。社会保障制度やら何やらをなんとかしないかぎり、残念ながら今後も手取りが増えることはないでしょう。
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年4月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。