店からレジが無くなるとき

岡本 裕明

ユニクロのファーストリテイリングは商品にICタグをつけて瞬時に購入額が分かる仕組みを今年の夏から一部店舗で導入するようです。将来的には全店展開するのでしょう。この動きはリテイラーに衝撃的な第一歩となるはずです。


これは商品のタグにチップが埋め込まれていて微弱の電波をセンサーが受信し、商品情報が一瞬のうちに端末に届き、合計額が出てくるというものです。将来的にはスマホ等での支払い機能と連動させればレジを通過せず、ノンストップで買い物の清算をすることすら可能になるとみています。

この機能のメリットは他にもたくさんあります。

まず、万引きが出来なくなります。未精算の商品は店の出入り口のセンサーが反応するため、どこにどう隠していても無理となります。(ICタグを取ってしまえば別ですが。)

店側はレジのスペースがいらないか、極めて省スペースで展開することが可能になります。つまり、店のスペースをもっと有効的に使うことが可能です。

報道にもあったように試着はするけど買わないアイテムが分かるなどきめ細やかな商品管理が可能になります。また、決算時の在庫管理も瞬時で終わらせることが可能になります。

人件費は大きく削減できます。

もっとメリットはたくさんあると思いますが、さっと手が動くだけでもこれだけあります。

実はこの仕組みは近いうちに必ずできると思っていました。それはマラソン大会の時のICチップです。大昔は背番号で人海戦術、次にチップが出来たての頃はゴールでそれを回収していました。コストが高かったからでしょう。5-6年前ぐらいからはチップの値段が下がったせいか、そのまま回収もせず家に帰ればゴミ箱行きとなっています。

このマラソンのICチップが凄いと思うのは万単位のランナーが一斉にスタートラインを通過するとき、一つ一つのピッという反応音が大きな音と化しながら全てを間違いなく処理するという事でしょう。この処理能力を感じた時、商品のICタグは必ずできると信じていました。

では、この便利になる技術で何が変わるでしょうか?今、ICタグは一つ10円を切るぐらいとされています。ただ、汎用化されればコストは大幅に落ちるとみられ、使用できる商品も増えてくるはずです。仮に一つ数円まで下がればスーパーマーケットの商品に使用できることになり、革命が起きると考えています。

これはスーパーのレジ打ちがほとんどなくなるという意味につながります。今までかごから商品を一つ一つ取り出してバーコード処理していた作業は必要なくなります。これはレジの行列が短くなるのみならず、上述のようにスマホなどを使って自動支払いすれば買い物客は直接かごから袋に移し替え、店を出ることが可能になるのです。いや、もしかしたらかごもいらなくて自分の袋に直接詰めればよいのかもしれません。

そこで困るのは主婦のアルバイトでしょう。週3-4回で一回5-6時間のお手軽アルバイトだったと思いますが、その仕事口はぐっと減ってしまうのです。これはスーパーマーケットのみならず、どこの店でも一気に進むことですから主婦の失業対策が必要になるかもしれません。

読者の方はそんなに早く普及はしないと思われるかもしれません。しかし、スイカやパスモなどスマートカードが出来てから国民にごく一般に普及するのに数年ぐらいしかかかっていません。スマホがなくてもスマートカードでも支払いが出来れば良いだけで顧客側の抵抗は極めて少ないのです。私は2020年までにはレジがない世界が普通になっている気がします。

一方、安倍政権は扶養控除の見直しを進めることを発表しています。首相は相当急いでいるようで2017年にも導入される気配があります。そうなれば103万円の枠はなくなり、可能性としては夫婦なら合算になることになります。ある意味ジレンマであり、主婦のお気軽アルバイトの道がどんどん狭くなり、一方で103万円に縛られることもないという点で大海にポンと突き落とされる感じがしないでもありません。

しかし、先日の私のブログの様に女性の時代は女性がもっている能力をもっと発揮できる場ができるという意味があります。日本のビジネス界に女性が大進出するきっかけとなるのかもしれません。正に「ICタグが女性の社会進出を助ける」とすれば「風が吹けば桶屋が儲かる」的な発想ではありますが、それぐらい世の中の変化は速いという事なのでしょう。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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