九州電力の現況について --- 宇佐美 典也

各電力会社の決算がまとまった様で、これを機に各電力会社の現況というものをまとめてみることにしたい。まずは種子島での再エネの出力抑制や川内原発の再稼働で何かと話題の九州電力からにする。


まず簡単な収支状況であるが

【売上1兆8734億円、営業損益▲433億円、経常損益▲736億円、当期純損益▲1146億円】

となかなか厳しい状況になっている。それでも東日本大震災直後に比べるとかなり改善したのだが、資本が半減(概ね1兆円→0.45兆円)し、有利子負債が増加(概ね3.1兆円→4.3兆円)しておりそろそろ限界を迎えつつある。

図1九電財務データ

売上自体は2003年度の1兆3916億円から4700億と3割弱増加しているのだが、九州電力の販売電力はこの10年間で800億kwh~850億kwh程度のレンジで安定しており2014年度も812.8億kwhと増えていないので、この売上増の大半は最も安い時期から2割弱上昇した電気料金の上昇を主因とするものである。

ただし電気料金の値上げによる収入増は、東日本大震災以降の燃料費の増加と打ち消しあう形になっており、九州電力の経営は悪化している。

図2九州料金
(九州電力データブックより)

図3燃料費
(九州電力平成26年度決算資料より)

このような中、九州電力が経営再建策として取り組むのは当然原発再稼働ということになる。原発を再稼働することにより燃料費を大幅に削減できるので収支は改善することになる。まず九州電力は原発の電源比率が18.7%と電源構成としてそれほど原発の比率が高いわけではない。

図4.5電源構成
(九州電力データブック2014より)

しかしながら東日本震災前は80%を超える稼働率を誇っていたため、販売電力量における原発の比率が非常に高く1997年には最大で48%にも上っておりその後も30%台を推移していた。いうまでもなく原発の稼働はそのまま燃料費の抑え込みにつながるので、経営立て直しのためには必須となる。

図4電源比率
(九州電力データブック2014より)

そんなわけで現在川内原発の再稼働に向けて着々と手続きが進められているわけだが、一方で電源計画も見直しが進んでいる。まず全体の販売電力量については、平成36年まで微増するというかなり固い見通しを置いている。

図6電力販売量

その上で当座としては大きくは老朽化した玄海原発1号機(1975年)と唐津の石油火力2・3号機(1971年、1972年)の廃炉が決定する一方、省CO2及びエネルギー効率改善の観点から水力発電、先端火力発電、原子力発電の着工・設備更新を進めている。

図5電源計画
(平成27年度九州電力経営計画より)

その他ガス事業への参入による総合エネルギー企業化、国内他地域での電源開発、海外でのIPP事業の参入なども進めるようだがこれらが九州電力という巨大企業で大きな変化をもたらすということは当面想定しがたい。

そんなわけで巨人は巨人らしくシンプルに「10年単位で販売電力量が維持されるという見通しの下で、ジリ貧となりつつある経営を原発を再稼働して立て直す中で、石油火力の廃炉を進め、最先端火力にリプレイスしていく」ととらえるのが妥当なのだと思う。

面白みがない内容ではあるが、ではでは今回はこの辺で。


編集部より:このブログは「宇佐美典也のブログ」2015年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のブログをご覧ください。