マクドナルド業績不振に学ぶ,不安遺伝子とビジネスモデル

杉山 崇

yahooニュースさまで以下の記事を執筆させてもらいました。

カサノバ
カサノバ

要約すると、日本人の多くは不安遺伝子を持っているので、「食の安全」を積極的に売らない経営戦略は今の日本には合わない…というものです。

まるで、この記事を裏付けるかのように、日本の若者がマクドナルドを避ける傾向が著しくなったことを示すデータも報道されました。

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1971年、銀座三越店内に国内1号店を開店して以来、40年以上も日本のファストフード業界を牽引し続けてきたマクドナルドが、過去に類を見ないほどの苦境に立たされて...

yahooニュースでは詳しく書きませんでしたが,ここでは日本人の不安遺伝子の詳細と日本人向けのビジネスモデルの話をご紹介しましょう。

5-httplr遺伝子というものがあります。この遺伝子はセロトニンという物質の代謝に影響しています。セロトニンの代謝は私たちの感情に影響しています。詳しく書くとややこしいですが,まあ,セロトニンが豊富だと感情はポジティブに,乏しいとネガティブになると思ってもらえればOKです。

そして,5-httpr遺伝子はLL型,LS型,SS型という3つの多型があります。

より正確にはL遺伝子にさらに多型があるので,20以上の多型になるわけですが,まあ,概ね3つと考えていただければOKです。

日本人の6割から7割はSS型を持つわけですが,SS型はセロトニンが乏しくなりやすいのです。

つまり,日本人の多くは不安になりやすく,不安を避ける事が行動原理になるのです。

不安が小さくなる行いを繰り返すようになることを心理学では「負の強化」と呼びます。

マクドナルドは「食の安全」を積極的に売ろうとしないので,いつまでも不安が払拭されません。異物混入などへの対応も,一部では「開き直り」とも揶揄されるような弁明では,「この人達が提供するものは安全だ!」と思わせてくれません。

日本人の多くに「マクドナルド=食の不安」というイメージが着いてしまったので,「マクドナルドを避ける=不安を避ける=安心」という負の強化が生じているように思われます。

商売をするなら,消費者を理解することは基本中の基本です。

日本人を相手にするならこの負の強化を考慮したビジネスモデルが必要です。

すなわち「安心」を売るのです。

マクドナルドのビジネスモデルは確かに一時代を築きました。

熱心なファンも獲得しました。

しかし,時代は変わりました。

テレビでもwebでも,過去のビジネスモデルに基づいてハンバーガーの華やかさ全面に出すマクドナルドの広告を見るたびに虚しくなります。

なぜ,日本の消費者をよく観察して「負の強化」が成立しやすい国民性に対応したビジネスモデルを作ろうとしないのか,不思議な限りです。

もう終わったビジネスモデルに固執するのではなく,消費者を見ていれば再建も出来たはずなのに…と思うのは私だけではないでしょう。

執筆者プロフィール

杉山 崇
神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科 教授
神奈川大学心理相談センター所長
法政大学・法政大学大学院・山梨大学 兼任講師
臨床心理士
1級キャリアコンサルティング技能士(国家検定)
公的な役職や委員も多数務めている。
4月に『入門!産業社会心理学(北樹出版)』を上梓。好評発売中!
著作は『グズほどなぜか忙しい(ナガオカ文庫)』、ほか多数。

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