シャープ「新中期経営計画」の公表を前に

今月9日の「99%減資報道受け」て一昨日「午前の東京株式市場で、経営再建中のシャープ株が急落し、一時、制限値幅の下限(ストップ安水準)となる前営業日比80円(31%)安の178円まで売られ」ました。本日13日のロイターに拠ると、資本金を1億円に減資する計画を5億円に変更するらしいです。


シャープは「現在、資本政策を含む新中期経営計画を策定中であり、5月 14 日午後3時に公表する予定」のようですが、報じられる類の様々なリストラクチャリングを断行したところで、その先も恐らくしんどいのではないかと思います。

あるいは、ソニーにしても「16年3月期の連結業績予想は、本業のもうけを示す営業利益が前期比4.7倍の3200億円(中略)18年3月期の営業利益目標に前期の約7倍の5000億円以上を掲げ」ているようですが、一度壊れたものはそう簡単には元に戻らず此の数字に関しても「本当?」と眉唾の感がします。

先日もソニーの旧経営陣が現社長に対して物を言うということがあったようですが、彼らが指摘しているような井深・盛田時代に培われた「ソニー・スピリット」は最早消滅しているのではと、私自身も感じます。

私は野村證券勤務時に日立担当者であった時代がありますが、当時のメインフレーム・コンピュータ部門の担当である日立副社長以下に、野村総合研究所の力も借りながら大プレゼンテーションをしたことがあります。

そのプレゼンテーションで私は、メインフレームの世界からPCの世界に軌道転換すべきだという趣旨の提案を行ったのですが、その時に言われたことは「いや~北尾さんね、PCでは飯が食えんのです」ということでした。

他方、ダウンサイジングの流れの中でその経営が大きく傾き始め「7年でつぶれる」とさえ言われた嘗てのIBMは、PCの世界への軌道転換を成し遂げて見事復活を果たしたわけですが、それは外部より全くその世界を異にするプロフェッショナル経営者、ルイス・ガースナー(1942年-)を会長兼CEOとして招聘し非連続的な改革断行を実現したからこそ出来たのです。

先月28日『「プロ経営者」採用の良否』というブログを書きましたが、シャープにしろソニーにしろ上記したIBMの如くその根本から抜本的に大きく変えて行かないと、恐らくその行き先は時間の問題となるのではないかとも思われて、こうした私の悪い予感が間違っていたらと願うものです。

2年半前よりのアベノミクス登場以後急激なドル高円安進行が起こる中で、日本のものづくりが回復したかのような認識を持たれている人もいるのかもしれませんが、再び円高局面を迎えることになれば輸出は一発で衰勢に転じて行きましょう。

では何ゆえ為替というある種の外的与件の変化によって、一企業がしんどくなったり救われたりするのかと言えば、それは日本の電機やものづくり或いはゲームを含めて世界中に数多の競争相手がいるということの証左に過ぎず、嘗てのように日本の国際競争力が断トツでライバルが暫く見えないといった状況とは大きく異なっているからです。

此の辺りの話については、『「日本の電機」は再生可能か』(12年8月30日)や『ソニーの凋落に見る日本の将来』(14年10月9日)等でも触れたことがありますが、過去の成功体験に溺れることなく好調な時に胡坐をかくのではなく、付加価値の高い新しいものを次々と創って行かねばその存立が脅かされるということです。

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