「海賊」という言葉を聞いて、何を連想するだろうか。「海賊王に俺はなる!」と高らかに宣言するマンガの『ONE PIECE』だろうか。はたまた出光佐三を描いた小説『海賊とよばれた男』や戦国時代の水軍を描いた小説『村上海賊の娘』だろうか。それとも主人公がジョニー・デップの当たり役となった映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』だろうか。
いずれにせよ、こうしたフィクションの中の海賊は、かなり美化されている。海賊とは略奪者であり殺人者であり犯罪者であり残虐者であり、反社会的な連中であることは明らかだ。英国は海賊船からの「上がり」で富を蓄積し、それが産業革命の原資になった、という説もあるが、古今東西、海賊が暗躍しなかった時代はない。
だが、フィクションの中の海賊は、上記のようにロマンチシズムに溢れ、束縛を嫌うエピキュリアンとして描かれることが多い。『ピーターパン』や『宝島』に出てくる海賊たちも、どこかユーモラスで憎めないキャラだ。犯罪者がヒーローになるピカレスクロマンは、例えばネズミ小僧のような義賊や国定忠治のような任侠者などではありがちなパターンだが、実在したとされる海賊にもネズミ小僧の海賊版とも言える中国の張保仔(チャン・パオ・チャイ)など義賊として後世に名を残した海賊は少なくない。
山賊にせよ海賊にせよ、単なる犯罪者が圧政に苦しむ庶民の中で伝説化し、義賊として美化されることはよくあるのだが、冒頭で並べた人気フィクションの主人公のように、なぜか海賊のほうが分がいいようだ。このあたりの心理的なメカニズムに何があるのか興味深い。表題の記事では、スウェーデンの違法ダウンロードファイル検索サイト「The Pirate Bay(パイレート・ベイ)」から6つの新しいドメインが生まれた、と書いている。「hydra(ヒュドラー)」は、ギリシャ神話に出てくる八岐大蛇のような怪物だ。
パイレート・ベイは、BitTorrentというファイル転送プロトコルを使い、ゲームソフトや音楽、動画などをファイル共有して違法にダウンロードする手助けをしていた。「海賊版」は英語でも「pirate edition」である。パイレート・ベイは、スウェーデン当局の取り締まりを受け、有罪判決が出てもとのドメインは押収された。一部のネットユーザーから英雄視されていたようだが、海賊を自ら名乗っていた彼らは一種の確信犯だったのだろう。
INTERNATIONAL BUSINESS TIMES
Pirate Bay seized by Swedish prosecutors and like the hydra it has spawned 6 new domains
Gap between rich and poor ‘keeps growing’
BBC NEWS
世界的な貧富の格差を調査したOECDの報告書について紹介している記事だ。貧困層が増えるとその国のGDPが下方へ引っ張られ、結果的に成長率が鈍化する。格差が経済成長を阻み、それがさらなる格差を生む、という悪循環が生じる。この調査によると、経済的に下方40%の階層は全体の富のわずか3%しか持たず、逆に上位10%の階層が全体の富の半分以上を取得しているそうだ。
A hot start to the origin of life? Researchers map the first chemical bonds that eventually give rise to DNA
PHYS.ORG
地球上に生命が誕生したメカニズムについては、研究者らの間で長い間、議論が続けられてきた。もっとも大きな疑問は、最初の生命がどうやってできたかだ。地球上の生命の由来が、宇宙から来たにせよ、地球で生まれたにせよ、この厄介な疑問に応えることはできない。この記事では、米国エネルギー省のローレンス・バークレー国立研究所とハワイ大学マノア校の研究者らが、宇宙のホットスポットと考えられる環境で窒素からDNA様の分子構造が生まれる可能性にアプローチしたかも、と書いている。この物質が本当に二重らせん構造の核酸と塩基配列になるのだろうか。結論を出すのは早計かもしれない。
No laughing matter: Some perfectionists have a dark side
EurekAlert!
完ぺき主義者の一部の人々は「ダークサイド」を持っている、これは笑い事じゃないぜよ、という記事だ。英国ケント大学の研究者らは、連中はとにかく自己陶酔したがり、ときに反社会的で攻撃的になる。ユーモアのセンスなど持ち合わせていない、と言っている。完ぺき主義者の累計は3タイプに分かれ、それが自分に向いているタイプはまだいいが、社会を変えようとか、他人の行動に口出ししようとかするタイプは要注意だ。映画『スター・ウォーズ』では、人間の心の弱さに屈したジェダイがダークサイドに堕ちてしまう。完ぺき主義者はライトサイドとダークサイドを取り違えるという勘違いを冒しがちなのだろう。
World’s largest hotel to be built in Mecca
The Telegraph
世界中に「門前町」があり、日本の長野では善光寺がご開帳をしている。江戸時代、封建制下では人間の移動が厳しく制限されていたが、中期以降になるとそうも言っていられず、伊勢参りや金比羅参りなどの名目で日本人が旅を楽しむようになる。清水の次郎長の子分、森の石松は金比羅参りの帰りに騙し討ちに遭って落命した。この記事で紹介されているサウジアラビアのメッカも、特定の趣味嗜好の人たちが憧れる街という代名詞にもなったように、ムスリムにとってまさに「メッカ」だ。礼拝者の数が半端ないわけで、宿泊施設はいくらあっても足りないだろう。
Dar Al-handrasahのHPより。
アゴラ編集部:石田 雅彦