森ビル広報の地震SNS対応が遅すぎる件

新田 哲史

どうも新田です。お洒落な安藤ミッフィーとは対極的に野暮で下世話な私ですが、六本木のアカデミーヒルズで時折、意識と景色の高いノマドやっております。そういうわけで私も仕事場の一つとして利用しているわけですが、小笠原沖の地震の折は自宅におりまして、エレベーター停止やらの災難は免れました。ただですね、東日本大震災も経験し、その当時もエレベーター問題があったわけですが、ネット上では、森ビルの広報対応の初動の遅さに不満が続出しているのをみると、私もアカデミーヒルズ会員としては不安になるわけですよ。



NHKニュースでは、52階から「現地」レポートをお客さんと思しき一般男性がされて、スタジオのアナウンサーとやりとりしているわけですが、スマホ時代なわけなので高画質な動画も放送局にススっと転送されて全中(全国ネット)で停電模様が放映されたり、YouTube投稿で全世界に拡散しちゃったりするわけです。あるいはツイート中継なんかが時事刻々されるわけで、もう森ビルにとってはネガティブでしかない雑感がどんどん出て、それがまた拡散されていくわけです。

22時時点でのNHKニュースの内容を聞いていると、防災センターからのコメントらしきものが取り上げられているわけですが、おそらく記者が直接センターの担当者から聞き出したとみられ、広報が土曜夜の発生ということもあってか手が回っていない様子がうかがえました(さすがに広報も緊急出勤はしてたでしょうが、視聴者・元社会部記者であるワタシメには、22時時点の報道では介在しているようには見えませんでした)。

先述のツイッターのように、ビル内でのアナウンスがあまりない中、52階にいた人たちがワンセグ経由でNHKから得る情報の方が俯瞰的だったりしたら、そのご心境は推して計るものがございますがね。現場でもそういう状況なわけなので、SNSでの配信なんぞに手が回っているはずもないわけなんですが、案の定、森ビル、六本木ヒルズとも23時時点、つまり地震発生から2時間40分も経過しているのに、何もツイートしていないっていうのはどうなんでしょうか。

イベントの宣伝情報やらコーポレート広報のニュースリリースだけを見せられても、仮に自分がその時間帯にヒルズの上層階で足止めされていたら、「バッグやアクセサリー、モバイルガジェットアイテム。キャンペーン実施中!」なんて見せられても商品やイベントへの敵意しか抱かなくなってしまうと思うんですよね。

そういえば、大型連休中の読書ラインナップの中で、電通PRの関係者が作った企業広報の心構えを説いた『戦略思考の広報マネジメント』という偉そうな書籍があるんですが、よりによってインタビューに応じた企業広報の中に広報室長の野村秀樹さんという方が、石丸幹二に成り切ったつもりでカッコつけたポーズで、会社自慢を色々とお話しされているわけです。

企業広報戦略研究所
日経BPコンサルティング
2015-04-02



※カッコいい写真で、カッコよく東日本大震災後の広報戦略を語る森ビル広報室長

「伝えるべきテーマを打ち出すタイミングを見極める」という、情報発信の狙いを説いたくだりがあるんですが、その中でこんなQ&Aがありましてね。なんですかこれは。

ーー特に重視しているテーマはどんなことでしょうか?
いずれも重要なテーマですが、特に「安全・安心」は私たちの都市づくりのベースとなるものです。(中略)六本木ヒルズは竣工した2003年当時から「逃げ出す街から、逃げ込める街へ」というコンセプトを掲げています。実際に先駆的な取り組みもたくさんしています。(中略)2011年の東日本大震災のときには六本木ヒルズの自家発電設備が大きな注目を集めました。「六本木ヒルズって自分で電気を作っていたんだ」ということです。自家発電については竣工当初から力を入れて広報していたんですが、当時は全く見向きもされませんでした。しかし、こういう皮肉にもこういう大災害で注目されることになり、これによって社会的にも、自家発電や非常用電源の考え方、ひいては企業のBCPに関する考え方などにも大きく影響を与えたと感じています。(『戦略思考の広報マネジメント』P.199~200)

お、おう。2時間40分もツイートひとつできないような広報周知体制で、「安全・安心」と言えるのか、今回の地震で取り残された利用者や、そのご家族のご意見はどんなものか興味深いものがございます。六本木ヒルズの自家発電装置の存在というのは震災当時、港区民の一人として私もある意味、心強い存在には思えましたが、「企業のBCPに関する考え方などにも大きく影響を与えた」と広報室長さんがコメント、つまり会社の公式見解として、そういう自負をお持ちであると言われましても、昨晩程度の揺れでこの状況というのは、ヒルズの一利用者としては非常に不安を覚えますね。まずは足元の広報・PR体制のBCPの現状がどうなのか、土日祝日の夜間帯に広報の担当者が不在だった時の大災害への対応ひとつ取っても、気がかりなところではあります。

もちろん、現場ではそれなりに対応もしていたとは信じたいんですが、広報さんにおかれましては反論やらご説明があったら、メールででも連絡してください。こちらも安心して引き続き「オフィス」の一部として使わせていただきたいんで。

それにしても広報責任者というのは「攻め」の広報でカッコつけた発言が後々ブーメランとならないようにするのは難しいものです。いろいろ痛い目に遭ってきた私がいうのもなんですがね。いずれにせよ、商業施設や観光スポットの広報担当者にとってはBCPを考え直すいい機会だったと思います。
ではでは。
新田 哲史
ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー
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