撤退の難しさ

雑誌『GOETHE』の15年7月号に、「引き技は攻めより10倍難しく、10倍の勇気がいる」という言葉が載っていました。之は孫さんの言葉として紹介されていたものですが、別に孫さんの言とか誰の言とか言う程のことではなく、言ってみれば常識程度の話でしょう。


前線から退くという場合、誰に殿(しんがり)を務めさせるかは戦国時代では難題の一つでした。1570年、織田信長は朝倉義景征伐のため越前に進軍するも自身の妹、市を嫁がせた浅井長政が離反して敵方につくという事態に陥りました。

朝倉・浅井に挟撃される危機を前に信長は撤退を図ります。此の時「殿、しんがりは、この猿めにお命じください」と買って出たのが、木下藤吉郎であるとは様々な物語で伝えられています。

何事においても退く時の決断や撤退する勇気を持つことは、非常に難しいと思います。物事はスタートするのは簡単ですが、此の物事を終結させるというのは中々難しいものであります。

例えば当ブログでは7年半程前「事業の撤退について」()書きましたが、事業経営でも引き際が分からなかったケースが結構みられます。始めの内はずっと成功し上手く行っていたが為に、スローダウンすべきタイミングや引き際を間違えてしまうものです。

自社の業務は之しかないといった具合に、そこには最早何ら疑う余地もなく同じ事柄をやり続け、そして引き際が分からぬまま時が過ぎ、結局がたがたになって終わらざるを得ない状況になるわけです。

変化し続けて行く此の世の中、環境はそう簡単に変えれるものでありません。だからこそ自らを変えることで、生き残ることを考えるべきでしょう。変化に対応せずには新たな変化の中で生きては行けないのです。だから自己否定・自己変革・自己進化というプロセスを続けて行かねばならないのです。

私は我がSBIの企業理念の中に、『セルフエボリューションの継続…経済環境の変化に柔軟に適応する組織を形成し、「創意工夫」と「自己改革」を組織のDNAとして組み込んだ自己進化していく企業であり続ける』という言葉を入れています。之はそうした企業体質を有することが、企業の長期存続の条件として非常に大事だと考えているからです。

繰り返しになりますが撤退という作業は、物事を始めるよりも遙かに難しいことです。過去の成功体験に溺れることなく、常に自己否定し自己変革を遂げ、そして自己進化し続けて行かねばなりません。之すべてトップは此の時世と社会を洞察しその変化に勇気を持って応じられねばならず、それが出来ないトップであれば国であれ企業であれ末は破滅の道を辿るのです。

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