チンパンジーも「飲み会」を開く

「猿酒」は俳句で秋の季語でもある。木のうろなどで果実が自然発酵し、濃度の低いアルコール飲料になることがまれにある。我々が飲んでいる酒は、もともとこうした自然現象から学び、人工的に作り出したのでは、とも言われている。また、市販の果汁が入ったジュースに酵母を入れると、一種の密造酒ができるらしい。

表題の記事では、英国の研究者らによる西アフリカにいるチンパンジーの「飲酒」習慣の研究報告を紹介している。よく知られている通り、エチルアルコールが体内に摂取されるとアセトアルデヒドという毒性の高い物質になる。これを分解して無害な酢酸に変える酵素がアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)だ。


チンパンジーなどの類人猿と我々人類には、このアセトアルデヒド脱水素酵素があるが、霊長類以外で持っている生物は少ない。これは樹上生活している霊長類が、糖度の高い果実類などを食べるために発達させた機能とも言われている。こうした果実には、自然発酵してアルコール分が含まれたものもあるからだ。同じ樹上生活者である小型のほ乳類、ツパイも椰子の花の蜜が発酵した「酒」を飲んでいるらしい。

この記事で紹介されているチンパンジーたちは、群の仲間で樹上に集まり「飲み会」を開いているそうだ。彼らは、近隣に住む人間が椰子の樹液を採集するために作った器に溜まった「酒」を飲む。アルコール濃度は3.1%から6.9%。なかなかの酒豪だが、酔っ払って木から落ちないか、同じ酒飲み同士、少し心配ではある。

THE ROYAL SOCIETY
Tools to tipple: ethanol ingestion by wild chimpanzees using leaf-sponges


Female scientist: ‘Women do cry in labs – but I’ve seen men weep over their test tubes’
The Telegraph
細胞分裂の周期に関係するタンパク質、サイクリン(cyclin)を発見して2001年にノーベル生理学・医学賞を受賞した英国の生化学者、ティモシー・ハント(Richard Timothy Hunt)博士が舌禍事件に見舞われている。BBCラジオに出演した際、女性蔑視の発言をし、謝罪したが炎上しているようだ。しかし、これでは同博士が持つサーの称号が泣くだろう。洋の東西を問わず、こうしたことはラボの中で日常的に起きているらしい。日本で理系に進む女性は依然として少ない。それは英国でも同じのようだ。

http://www.science20.com/news_articles/why_some_girls_dont_study_mathintensive_science-156055
Science 2.0
上の記事に関係しているようだが、女性はなぜ数学で才能を発揮しないのか、という話だ。男子学生のほうが数学ができることを過大評価し、女子学生はその逆になる傾向があるが、人口の半分である女性が特定の分野で能力を伸ばせない、というのは明らかに社会的な損失だろう。この記事では、数学というのは一種の言語であり、女性に特有の言語理解能力は、この分野で活用できる可能性がある、と書いている。

Iraqi Security Forces, Shiite militias make gains in Baiji
THE LONG WAR
バグダッドの北西約210kmに位置するバイジ(Bayji)という街は、イラク第二の都市モスルへ向かう要衝だ。大規模な石油製油所や発電所があり、イラク国内の鉄道網の要的な存在でもある。モスルは2014年にいわゆるイスラム国(IS)に奪われたままだが、イラク政府軍はモスル奪還のためにもバイジという街を重要視してきた。バイジもISの支配下にあり、この街の主は去年から二度変わっているが、6月8日までに米軍などの支援を得たイラク政府軍が奪い返したらしい。ただ、ISにとって製油所は重要な資金源でもあるが、ここからの原油は石油価格にも影響を与えるため、この先も激しい攻防戦が繰り返されるのかもしれない。

Enlisting student emotions busts bullying behaviour
PHYS.ORG
米国でもイジメの問題が深刻になっているようで、この記事では軍隊のイジメ対策プロジェクトから、イジメる側をどうやって「共感」行動や相互の尊重といった方向へ導いていくか考える研究を紹介している。単に社会や学校、組織などでイジメは悪い、と唱え続けてもあまり効果はないらしい。やはり、他者からの「視線」が重要で、グループディスカッションや社会的なコラボレーションでより深い理解を模索する過程からイジメを振り返ることができる。イジメはかなりプリミティブな感情の問題なので、自分がイジメをしている、という客観的で批判的な視点が必要というわけだ。


アゴラ編集部:石田 雅彦