頭がいい人

「頭がいい人」ということでネット検索してみますと、例えば「トップランナーに聞いた“頭のいい人”の条件」とか「頭のデキが良い人が持っているスキルとは?」とかと関連記事が様々あります。


私自身、会社の役職員、お客様、お取引様の役職員、多種多様な人間を野村證券で見、ソフトバンクで見、そして我がグループを形成して見てきました。少なくとも私の経験上から申し上げると、此のビジネスの世界での事業成長に対する貢献ということでは、学力という事と「頭がいい」という事とは全く関連性が無いものです。

勿論、世に有名な大学に入り優秀な成績で卒業した人に、例えば暗記力や勤勉性等の資質に長けている部分があることは否定しません。しかし実社会というのは、種種雑多な人間がいて矛盾を様々内包する正に複雑系と言えるものです。人と人の繋がりで成り立つ複雑霊妙な此の社会、そこで何よりも重視されるのは暗記モノで高得点が出せる能力でありません。

そこで重視されるべきは第一に、「人からどう信頼を得るか」や「人にどうやって好印象を与えるか」といったことだと私は思います。此の人間関係を如何に円滑に持って行くかといった問題は英国社数理の類でなしに、相手の心の読み方・読んだ上での動き方等の言わば心理学の世界です。

第二に、こうしたら上手く行くのではというある種のインスピレーションが湧くこと、あるいは他とは次元を異にしたイノーバティブな発想が出来ること、が大事だと思います。現下の教育制度で秀才と称される人は、実は記憶を司る側頭葉の機能に秀でているのが確かなだけです。イノベーション等を齎すと言われている頭頂葉および前頭葉の働きが、どれ程優れているかは定かでないのです。之は、3年半程前のブログ『岡潔著「日本民族の危機」について』でも指摘した通りです。

最後に、ちょっとした変化が世の中に起こった時、それが大きな変化となって自分の仕事にどう影響するかをぴんと感ずる能力、あるいはこういうものが有ったら便利だろうと閃き、粘り強く一生懸命そのアイディアを形にして行く能力、等々が挙げられます。

私どもSBIでは、学閥・門閥・閨閥・性別・国籍等この類の全てを問いません。ですから入社時の私の最終面接では、「学校の成績がどうだったか」や「大学の出身はどこか」、あるいは「大学を出ているか否か」等々には全く触れることはありません。

私が人物を見るにその評価対象項目の殆どは、五教科の点数では測れないものなのです。何故なら仕事においては、そうした能力の方が余っ程大事だと思うからです。そして最終的には人間的魅力です。その全人格から醸し出されるものがその人物評価の対象であり、「頭がいい人」とはそうした中で言われる話だと思っています。西洋流に言えば、アカデミック・スマートでなくストリート・スマートこそが、ビジネスの世界では大切なのです。

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