今週を振り返って トヨタ、JDパワー、FOMCなど

今週も様々なイベントや事件が起きました。それらをざっと見ながらコメントを述べてみたいと思います。

まずはトヨタ自動車。3時間2分の株主総会で種類株の発行がようやく可能になり、安どしていたところだと思います。ジュリーハンプ常務取締役の麻薬取締役法の疑いでの逮捕は豊田社長にとって青天の霹靂といってもよいでしょう。同氏が鳴り物入りで今年4月に常務に着任したのはトヨタの男ばかり、日本人ばかりの役員構成の改革の一環でした。

豊田社長が記者会見にまで追い込まれていますが、報道を見る限り、ハンプ常務は確信犯のように思えます。本人が申告しなくてよい宅急便、ネックレスの下に隠してあること、本人はオキシコドンを使う病状にない点を考えるとハンプ常務が日本では認められないこの薬物がどうしても必要とされる事態にあったとみた方がナチュラルです。

有能な弁護士を採用し、会社のメンツを守るためにトヨタは徹底的に守りに入るはずです。その結果、彼女が起訴されず、無罪放免となる可能性はあります。が、常務且つ広報というパブリック向けの仕事をしているなら会社のイメージを大事にする日本企業、特にその頂点に立つトヨタとしては厳しい対応を迫られることになるでしょう。無罪なら無下に閑職に追いやるわけにもいかず、かといって日本人はこういう点には厳しい目を向けます。私が社長なら日本在住からアメリカ駐在に変えます。

ところで日本ではあまりニュースになっていませんが、JDパワーが17日に発表した初期故障率に於いて国別では日本車は29年ぶりに平均を下回るというさえない結果になりました。この初期故障は新車の初めの90日間で故障が発見された比較で2015年は平均が100台当たり112件ですが、日本車は114件とヨーロッパ車の後塵を排したのみならず、韓国車が90と大きく水をあけられています。個別ではポルシェが80でトップであります。

たかが調査結果の一つかもしれませんが、日本企業はモノづくりの気持ちをやや忘れかけていないでしょか?このところ相次ぐ日本企業による海外企業や海外部門の買収ニュースを見るたびに果たして本当に効果があると判断しているのか不思議に思うケースもあります。

80年代後半に日本企業が世界の不動産を買いまくり大失敗しました。次いで中国進出ブームに乗って出たはいいけれど、という企業が後を絶たないということも起きました。今、日本企業は「成長」というお題目のもと、世界の企業をやみくもに買いまくる悪い癖が出てきているように思えます。買収するならずっとその国で根を生やすつもりで足元をしっかり固めた方がよいでしょう。駐在員が数年おきにローテーションするような軽い気持ちではもはや成功はしません。

次にアメリカFOMC。さして目新しいステートメントがあったわけではないのですが、市場の反応は年内に利上げがするのがふさわしいという言葉の解釈に踊っています。カナダ側報道から見ると9月利上げの確率はまだ高いと報道されていますが、市場の反応は12月までに一回という見方に移りつつあり、やや後ずれしている感があります。

最大のネックはインフレ率でしょう。全然上がりません。5月分の統計からはCPIは年換算でゼロ、コアが1.7%と低迷しています。この内訳をみるとガソリン価格が10.4%上昇し、エネルギー価格全体が4.3%上昇したことでインフレ率改善を下支えしていますが、石油価格はここからは上昇しにくいとみられており、インフレ率上昇のエンジンが不足します。消費者物価指数がほとんど上がらない中での利上げはその正当性が十分証明できるのか、微妙な気がします。

最後に日本の株式。12連騰のあとのお疲れ感がそろそろ取れそうな気がします。木曜日は終値で20000円を割り込み、サイコロは3勝9敗と快晴続きから一気に梅雨前線で湿ってしまったような感が見受けられます。金曜日に反発しましたのでこれで最悪期を逃れるきっかけになるかもしれません。

目先最大の焦点は22日のギリシャを巡るEUの緊急サミットになりますが、良い結果が生まれる公算は今のところ低いとされます。ブルームバーグによるとギリシャの預金流出は今月40億ユーロ、この二日で18.5億ユーロが確認されています。その為にECBが緊急流動性支援を更に提供することになりますが、この決議も22日でギリシャに飴と鞭で最後の判断を仰ぐことになりそうです。

ギリシャ問題がすっきりしないことには日本の株価も調整が続くかもしれませんが、日本の株がこれ以上売り込まれる理由もないと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 6月20日付より