米株は、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)がギリシャ支援協議をめぐり進展なく閉幕したため3日ぶりに反落しました。ダウ平均は1週間ぶりに18000ドル割れで取引を終えています。
NY時間正午過ぎに米株が下値を広げていった要因は、もうひとつございます。アップルへの口撃でお馴染み、物言う投資家のカール・アイカーン氏が経済金融専門局CNBCの”ファスト・マネー・ハーフタイム・レポート”に出演し「市場は極めて過熱している」と警告を放ちました。特にジャンク債投資を問題視しています。
アイカーン氏いわく「2007年当時のように、罠へ向かって歩みを進めている」と指摘。その上で「私のような広く尊敬を集める投資家は、(一般投資家が)失敗をしでかす前に警鐘を鳴らすべきだ」と発言しました。多くの企業が会計手法を駆使して業績を実態より良好に報告しているとも、注意を促します。2007年のデジャ・ビュのようだと述べ「劇的な下落を迎えうる」と大胆に予想、規制当局が決算発表・ガイダンスを精査する可能性にも言及しました。
事前にツイッターで同様のメッセージを送る念の入れよう。
(出所:Carl Icahn/Twitter)
アイカーン氏は米経済の回復を認めながら、低金利の環境を踏まえると「どこまで人工的か定かではない」と疑問を呈します。また米経済を病人になぞらえ「投薬を停止するまで長ければ長いほどインフレを抑制するのが困難になり、必ずインフレがやって来る」と釘を刺しました。
米株市場での過熱感にも配慮したのか、アイカーン氏は1対7の株式分割を発表したばかりのネットフリックスを全て売却したことを明らかにしています。アップルこそ、上昇余地が高い銘柄とのスタンスを貫いていました。
アイカーン氏による警告は、今回が初めてではありません。2014年10月、決算シーズンや量的緩和(QE)終了宣言を控え、ディスインフレ懸念やエボラ出血熱が市場の不安を煽るなか、ダウ平均は決算シーズンにかけ大きく下落。同年10月15日には8ヵ月ぶりの16000ドル割れを示現したものです。それから約1週間後の21日、米株市場が勢い良く買い戻される過程でアイカーン氏は注意喚起していました。今回は、同氏の神通力が市場を左右するのでしょうか。
(カバー写真:Brendan McDermid/Reuters)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年6月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。