国際通貨基金(IMF)は、あらためて米連邦公開市場委員会(FOMC)に年内利上げ先送りを要請してきました。
今回は、ドッド・フランク法を下にした金融規制改革案を挙げます。重要なポイントとして「金融市場の脆弱性が高まっており、システム自体の弾力性改善を重んじる必要が出て来た」と指摘。「規制改革は不完全で監視態勢の構造はあらゆる面で強化すべき」と説き、注意を促します。リーマン・ショック後に設立された金融安定監督評議会(FSOC)では役不足、と暗に批判しているかのようです。
浮上しつつある脆弱性の要因として 1)信用リスクの上昇、2)引き受け基準の緩和、3)低格付け会社で容易な資金調達——を列挙し、株式市場も「多くの手法でみて割高」と認識を示します。また保険会社からヘッジファンドなどノンバンク・セクターにおけるリスク不透明性のほか規制・監督ツール不足、債券市場での流動性欠如、保険セクターが取るリスク拡大なども忘れません。
その他、米国経済のリスク要因として1)ドル高、2)原油安、3)住宅市場、4)債務上限引き上げ問題、5)利上げ、6)世界景気鈍化に伴う輸出縮小——を指摘。インフレについては賃金伸び悩み、ドル高インパクトを引っ張り、「2017年半ばまで目標値2%に回帰しない」との予想も貫きました。
2015年成長見通しは2.5%増を維持していますが・・。
(出所:IMF)
つまりは景気動向やインフレに疑問が残る上、マーケットに不確定要素が溢れるために「今年、利上げはするな!」と訴えているというわけです。
今回で年内利上げ先送りを訴えたのは4月を含め、6月、2016年半ばまで待つよう呼びかけた6月29日以来、4回目。ギリシャ債務危機のおかげで約16億ユーロの借金が返ってこないだけに、「余計なことしないでね」と念を入れたかったのでしょう。イエレンFRB議長、外圧を意識してジャクソン・ホール会合出席を見合わせたのなら読みは完璧だった?
(カバー写真:IMF/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年7月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。