最近、日本を訪れる外国人観光客が目立って増えている。ところが、世界でのランキングを見ると、必ずしも順位が高くない。
世界観光ランキングによる(Wikipediaへのリンクですみません)と、外国人旅行者ランキングで2014年の日本の順位は22位。20位の韓国より低い。
日本1342万人で韓国は1420万人。その差約80万人。日本は最近韓国との詰めているが、まだ追いつかない。でも、さすがに韓国より低いというのは、皆さんおかしいと思わないだろうか。
日本が韓国に負けているのは統計の基準が違っているからである。韓国は、外国から来て韓国で乗り換えて他の国に向かうトランジット客を、韓国に入国しない人もこの数字に含んでいると言われている。一方日本は、トランジット客は一旦入国した人しか訪日客に含めていない。
韓国・ソウル仁川空港のトランジット客は年間700万人以上である。この数字を引けば、日本は韓国より遥かに外国人訪問客が多いのだ。
ところでトップはフランスの8370万人である。日本の6倍以上。でも、これも果たして日本と同じ基準で算出した数字なのだろうか。
ヨーロッパにはシェンゲン条約というものがあって、加盟国は域内で出入国審査をしないことになっている。また、加盟国外から加盟国に入る場合、最初に入った国で入国審査を受けて、加盟国内の他国に移動しても、新たに入国審査を受けることはない。
例えば日本からパリ経由でローマに行く場合、パリは乗り継ぎだけで入国しなくても、パリで入国審査を受け、ローマに着いた時には審査がない。イタリア旅行をする時に往復パリ経由であれば、パスポートにフランスの入国・出国印は押されるが、イタリアのスタンプは押されず、イタリアに入国した証拠は残らないのだ。
この時、パリではトランジットだけで入国しなくても、フランスへの外国人入国者としてカウントされるのだろうか。多分、されるのだろう。
出入国審査がないということは、正確に自国を訪れる外国人をカウントすることは不可能である。となると、多分、フランスに入る飛行機、鉄道、自動車の乗客は、全て自国の訪問者としてカウントしていると考えられる。
となると、毎日通勤で国境を越えている人は、毎日入国者としてカウントされているのだろう。観光客と通勤客を正確に区別するすべはない。
ここまで考えると、他国と比較した観光客ランキングの上下で一喜一憂する意味は、あまり無いのだ。仮に日本が韓国を抜くとなると、韓国は対象者を広げて、日本より上に行くようにしてくることだって、大いにあり得るのだから。
前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師