「投資のプロ」はアクティブではなくインデックス運用 --- 内藤 忍

本日の日経新聞朝刊18面に個人投資家にとって貴重なデータを見つけました。公的な年金運用資金であるGPIFの日本株運用におけるインデックス運用の比率は87%を占めているというのです。

この中にはスマートベータと呼ばれる純粋なインデックス運用ではないものも含まれている可能性がありますが、いずれにしても「ファンドマネージャーのジャッジ」という人により主観的な判断を入れない運用方法がほとんどというのは、個人投資家の資産運用とは対極のものです。

個人投資家が購入できる投資信託は日本国内に3000本以上あると言われていますが、その大半はインデックスファンドではなく、アクティブファンドです。つまりファンドマネージャーのジャッジによる運用が主流であるということです。

年金基金のようなプロの運用がインデックス運用主体、個人金融資産の運用がアクティブ運用主体。なぜ、このような対照的な構成になってしまうのでしょうか。

その理由は、個人投資家の中にアクティブ運用でインデックス運用より高い運用成績が実現できるという「幻想」があるからだと思います。

確かに、インデックスを上回る運用成績を実現しているアクティブファンドが存在するのは事実です。しかし、そのようなファンドを見つけ出すことは簡単ではありませんし、成績が良くなって、個人投資家の資金が大量に流入し、その結果運用成績が悪化してしまったアクティブファンドもあります。

インデックスファンドには「規模の経済」がありますが、アクティブファンドには「規模の不経済」があるのです。適正なサイズを超えると、機動的な運用ができなくなり、パフォーマンスが悪化するのです。現在好調な運用成績を続けていても、人気ファンドになり、その結果運用資産が増えて、運用成績が悪化するという可能性もあるのです。

この記事を読んでいて気になったもう1つのことが「投資のプロ」という言葉の使い方です。

企業分析と株価水準から有望銘柄を選ぶのが「投資のプロ」ということで、アクティブ運用こそがプロであるという認識のようです。しかし、現実はプロの機関投資家の代表である年金基金はインデックス運用を主体に運用を行っているのです。つまり、「投資のプロ」というのはコストをさげて市場に連動した運用成果を目指すインデックス運用なのです。

アクティブ運用がインデックス運用より専門的でプロだという「メディアバイアス」が個人投資家の幻想を生み出す一因となっているのではと思ってしまいます。田口良成さんという方の署名記事ですが、機会があれば直接お話を聞いてみたいと思っています。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年7月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。