船頭多くして2520億円に上る

昨日の日経新聞朝刊に「財政赤字6.2兆円に縮小、20年度基礎収支、内閣府試算―試算前提に懐疑の声、歳出抑制策、中身見えず」との見出しで掲載された記事がありました。


当該中長期の財政試算に準ずると、来たる20年度「税収の上振れと大幅な歳出抑制を見込み、赤字額は今年2月時点の試算の9.4兆円から3.2兆円縮小」するものの「政府が目標としている赤字ゼロには届かず、一段の財政再建策が必要になる」ようです。

此の2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場「新国立競技場」の建設計画につき、安倍晋三首相は丁度一週間前「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直すと決断した」と表明されました。

その直前マスコミ各社の世論調査を見ていても実に8割以上と圧倒的多数の国民が見直しに賛成でしたし、アスリートや競技関係者あるいは与野党問わず様々な議員から各種批判が噴出していた中、そのまま事が運んで行く話だとは到底思えないものではありました。

今回最終の数字となった2520億円という規模を考えるに、北京五輪(08年)が530億円そしてまたロンドン五輪(12年)が950億円でしたから、一体幾らで収まるかは未だ分からぬものですが少なくとも2000億円、3000億円と掛けるようには当然ならないだろうと踏んでいました。

そもそもが冒頭で触れたように、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の20年度黒字化を財政健全化目標として掲げておきながら、こうした部分での歳出抑制かなわねば、一体何で以て節約するというのでしょうか。

日本「国内では招致時の公約違反を懸念する声が強かったが、実はIOC自身が五輪コスト増大への危機感が強」く、実際上記した白紙撤回の翌日にはIOCのトーマス・バッハ会長が理解を示されており、私としては今後競技場として不足なきものを出来るだけ簡素に作ることを目指すべきだと思っています。

12年11月のザハ案の決定時、民主党政権下の国際コンペで示された1300億円という総工費はその後、自民党政権下での圧縮の「努力」虚しく膨れ上がり、挙げ句の果ては「関係者の責任転嫁、無責任体制」という顛末を世界に曝すこととなりました。

私は今回この余りにさもしい光景にびっくり仰天してしまいましたが、資金負担を要請されている東京都は兎も角、下村博文文部科学大臣や遠藤利明五輪担当大臣さらには五輪競技大会組織委員会会長の森喜朗元首相等々、正に「船頭多くして船山に上る」という状況だったのではと思われます。

東京都の舛添要一知事は今週月曜日、御自身のブログで「国民に祝福される新国立競技場建設を:提言」として次の三点、「(1)新しい政策遂行機関の設立」「(2)情報公開」「(3)ゼネコン・設計者にも説明責任を果たさせること」を挙げられていました。

知事いわく「(2):そこには、公開できない利権があったのかもしれない」「(3):公にしたくない裏取引があったからかもしれない」ということで、これまで船頭が多かったのはそこに何か大きな利権が生じていたからかもしれません。

此の実際が如何なるものか私には知る由もありませんが、今回ただ一つ言い得るのは「船頭多くして」情けないとしか言いようがない御粗末な結果になったわけですから、以後船頭としては五輪担当相が務め、各省及び東京都が全面的に協力すればそれで十分ではないかと思います。

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