イラン核協議は今月14日、最終文書に合意し、イランの核計画の全容解明に向けてゴー・サインが下されたが、それを受け、国連安全保障理事会は20日、最終合意内容を承認する決議案を採択した。これによって、対イラン制裁の解除に向けた手続きが開始されるが、欧州企業はイランとのビジネス再開に向け急テンポで準備を進めている。
▲イラン・EU貿易投資会合(2015年7月23日、オーストリア経済会議所内で撮影)
対イラン制裁の解除は来年に入ってからだが、それまで待てないと言わんばかりに、欧州の企業は凍結されてきたイランとのビジネス再開に向け走り出している。欧州連合(EU)の経済大国ドイツのガブリエル経済・エネルギー相は21日まで3日間、60社余りのドイツ企業代表を連れてテヘランに一番乗りし、ロウハーニー大統領と会談している。ドイツはシーメンス社などテヘランとの商談経験の豊富な大手企業が多く、イランとのビジネスに積極的だ。
一方、イラン核協議では米国と同様、厳しくイランを批判してきたフランスも来週にはファビウス外相がイラン入りするという。核問題とビジネスは別問題というわけだ。ちなみに、イラン学生通信が22日報じたところによると、中国はイラン南部で2基の原発建設の受注を受けた。制裁解除後を狙ったビジネス攻勢は欧州だけではないわけだ。
イラン核協議の外交舞台を提供したオーストリアでも23日から2日間、「イラン・EU貿易投資会合」が開催された。主催者はオーストリア経済会議所(Christoph Leitl会頭)だ 。会議にはオーストリアとイラン両国の企業代表のほか、テヘランからMohamad Reza Nematzadeh 工業貿易相らも参加した。
オーストリアの対イラン輸出総額は2004年、約4億ユーロだったが、昨年は約2億3200万ユーロと過去10年間で半減した。それだけに、対イラン制裁解除を控え、失ったビジネスを取り戻そうというわけで、オーストリア経済会議所が先頭に立って発破をかけている。オーストリア側としては、機械、薬品、食糧品分野でイランの市場進出を目指している。
なお、イランの核問題を批判してきた非政府団体「爆弾ストップ」(Stop the Bomb)はウィーンの経済会議所前で、「イラン政権とはノー・トレイド」を訴えたデモを行ったが、会議に参加する企業関係者にそのアピールが届いたかは不明だ。
同グループは報道用声明文で、 「オーストリアとドイツの企業はホロコーストから70年が過ぎた今日、イスラエルを壊滅しようとするイランと貿易を行うため、先頭に立っている」と批判している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。