就職情報会社の「ミスマッチ」に気をつけろ!

就活生や就活にたずさわる仕事をしていれば「就活のミスマッチ」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。ミスマッチとは、採用する企業と学生との間に認識のズレがあり、入社後にギャップが生じて、新卒社員が早期に離職してしまうことをあらわします。3年で3割の新卒社員が離職することが「ミスマッチ」の基準とされていますが実際はどうなのでしょうか。

■ミスマッチとは何者か?
関心のある方は「新規学校卒業就職者の調査」(厚生労働省)の調査レポートを過去にさかのぼって調べてください。昭和40年の高度経済成長時代からミスマッチは社会問題として取り上げられています。遷移に変動はあるものの当時の数値と現在の離職率にそれ程の乖離があるわけではありません。

就職情報会社は「3年で3割も辞めるんです。だからミスマッチです!」と強調します。ではこの数値を検証してみましょう。ソースは2010年以降のものを参照しますが、アメリカ労働統計局によれば、大卒者が32歳までに平均8回転職することが明らかになっています。イギリス国家統計局によれば、大卒者が入社4年以内に3回以上の転職をする割合が「男性22.7%、女性26.4%」であり、大韓民国統計庁によれば、大卒者が初めて入社した会社の平均勤続年数は2年未満、3年後の離職率は7割を超えています。

各国の調査結果は調査項目が統一されていないため比較は難しいですが、少なくとも日本のミスマッチとされている基準(3年3割説)が高いとはいえません。各国の数値と比較しても、高くないということは、日本のミスマッチの定義自体がそもそも間違っているということです。ミスマッチというのは、過去から続いている市場の法則だということがわかります。就活においてミスマッチがクローズアップされることが極めてナンセンスだといえるのです。

■昔の就活のほうが辛らつだった
学歴フィルターという存在は、ネットが一般化する前から存在します。昭和40年代にさかのぼれば、いまよりも辛らつな学歴採用が存在していました。日本を代表する重厚長大型企業や金融機関の多くは、大学別による幹部候補生採用を明確に打ち出していました。いまだにその流れが残っていますが、変化したことは企業がオブラートに包むようになったことです。学生も呼応するように採用に必要な情報をオブラートに包むようになりました。

なお補足するならば、学歴と社会的成功の相関関係はありません。企業側は目に見える指標として学歴を用いているだけなので、学歴フィルター自体に問題はないと考えられます。また昨今の就活で注意すべきはSNSの利用方法です。SNSが一般化した現代においては、瑣末な情報から個人情報が容易に特定されると考えたほうが良いでしょう。個人情報漏洩がニュースになることがありますが、いまでも図書館で古い電話帳を閲覧すればそこにも個人情報の山が存在します。

企業にとっては学生は採用対象者であることは言うまでもなく、広報対象者であり消費者(お客様)です。採用対象者である学生は、企業の狙いや意図を明確に理解したうえで戦略を練りこむ必要性があります。なお、いまの就活システムは合理性に欠けるため企業と学生の双方にとって大きな機会損失をもたらしていますから見直す時期にきていると思います。

●尾藤克之
ジャーナリスト/経営コンサルタント。代議士秘書、大手コンサルティング会社、IT系上場企業の役員等を経て現職。著書に『ドロのかぶり方』(マイナビ新書)、『キーパーソンを味方につける技術』(ダイヤモンド社)など。
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