鳥の目・虫の目・魚の目、先を見通す眼

今年5月このフェイスブックに投稿した『孫正義の後継者』に対し、小山田泉様より「商事や物産を引き継いだ人の多くはサラリーマン社長で、それだからこそ続いたのかもしれません。(中略)創業期に大きなリスクをテイクしたら、その後はできればあまり過度なリスクを取らずに続けていく(中略)、皆、天才ではなかったかもしれないが、安定飛行するだけの優秀な人々が多かったと言えるかもしれません。如何でしょうか?」とのコメントを頂きました。


要するに「創業と守成いずれが難きや」と『貞観政要(じょうがんせいよう)』にある通り、創業には創業の難しさが守成には守成の難しさがあるわけです。会社のステージに適した夫々の時代に相応しい人間が必要とされ、創業経営者の類のタイプがずっと続くのが最良かは疑問に思う部分があります。

唯一つ言い得るのは之だけ変化が激しい時代にあって経営者に求められるのは、ある程度の先見力を有し5年先10年先が後追いで殆ど正しかったと結果証明され行くようでなければならないということです。

従ってリスクを取る取らぬというよりも、ある程度の確度を持って「之をやったらこういうネガティブな展開が有り得るだろう」とか「之をやればこういうふうに物事は進展して行くのでは」といったある種の読みがきちっと出来る、言うなれば未来を認識する能力が経営者には必須なのです。

一ヶ月程前に私共SBIが大阪で主催したある講演会で、リッキービジネスソリューション株式会社代表取締役の澁谷耕一さんが興味深い話をされていました。一つはイトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊名誉会長より伺ったと言われる、「3つの目…鳥の目・虫の目・魚の目」の話です。

曰く「鳥の目は、政治・経済情勢などを俯瞰するマクロ的な視野」「虫の目は精緻なミクロ目でビジネスに関して細心の配慮をすること」「魚の目は潮流を読むこと」で「その中で今一番大事なことは魚の目(中略)、そうした時代の潮流を見極める目が経営者には必要」だということです。

それからもう一つ、澁谷さんは「5つの能力」にも言及されていました。それは、文部科学大臣の下村博文さんが仰っていたと言われる「3つの能力」、①課題解決能力②無から有を生み出す能力③人間力、に澁谷さんがその必要性を思い加えられた「2つの能力」、④情報処理力(…溢れる情報の中から必要な情報を選ぶ能力)⑤未来を認識する能力、で構成されます。

此の未来認識能力とは、正に先見性ということです。私は、小山田様の御質問に関しては上記の如くリスクを取る取らないの問題として捉えるのでなく、どの時代であれ経営者というのが「3つの目…鳥の目・虫の目・魚の目」を備えているか、あるいは先を見通す眼が十分かといった点が重要かと思います。

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