プエルトリコ、米国の自治領として初の債務不履行(デフォルト)に陥ってしまいました。パブリック・ファイナンス・コープ(PFC)が発行した債券の償還5800万ドルのうち、期日の3日に(1日が土曜日だったため繰り延べ)たった62万8000ドルしか支払えず。スアレス知事主席補佐官が7月31日に元利を返済する資金がないと宣言した通りで、格付け会社ムーディーズも「デフォルト」を認定しました。一般財財源債向け償還基金への月ごとの預金も、停止したといいます。
CNNマネーによると、プエルトリコ政府は法的措置を講じる可能性がある債務はきっちり支払っていました。つまり、今回のデフォルトの被害者はウォールストリートではありません。債権者のほとんどは、信用組合を通じたプエルトリコ市民。泣き寝入りしてくれそうな相手を選んだ「戦略的」なデフォルトだった、と判断できます。景気後退に苦しむ市民は、故郷を捨てアメリカ本土へ続々と旅立っているというのも、頷けますね。
プエルトリコの債務総額は、約720億ドル(8兆9280円)。2013年に財政破綻したミシガン州デトロイトの180億ドルを4倍という水準です。債務再編を急ぐものの人的資源が失われるなか、まさに「死のスパイラル」へ一歩近づいたと言えるでしょう。
米国の金融市場を直撃する大荒れの事態になるかというと、何とか封じ込めに出るのではないでしょうか?小さい島を舞台しながら、債務と債権者が大き過ぎて潰せない事情もあって、2016年米大統領選を前にオバマ米大統領も共和党側も本土を揺るがす危機を回避した方が無難です。今回のピンポイント的なデフォルトにしても、米国およびウォールストリートを敵に回すとは想定しづらい。つなぎ融資で延命していくのか、あるいは第2のフロリダ州として隠居した人々の楽園へ変化していくのか。新たな秘策が求められます。
(カバー写真:Dmitry K/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年8月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。