日本の最大の潜在的脅威は、つねに米国

プレジデント8月31日号に載っているジョージ・フリードマン氏(米政治・地政学者)の長期予測が面白い。要旨をまとめると--。

日本は中国の台頭と米国の内向き志向、軍事削減などから2030年ごろまでに独自の軍事力を強化する。資源を持たない日本は中東からの原油輸入など海洋権益を独力で守るに必要があるからだ。だが、そのことが米国の対日警戒心を強め、米国の対中接近もあって、日本は米中韓との対立から東アジアで孤立感を深める--。

本当かね? そう思う人は多いだろう。しかし、この後がさらに驚く展開となる。

これに対応するため、日本はトルコと同盟を結ぶというのだ。フリードマン氏の長期予想では、なんとポーランド、トルコ、日本が世界の三強国家になる。

トルコは中東の平和のカギを握っており、中東をまとめられるのは米国ではなく、トルコだ。そのトルコと日本はエネルギー確保など多くの点で利害の一致が見られ、これまで以上に互いを必要とするようになる。

フリードマン氏によると、中国は大規模な軍事力を持っているが、内部は脆弱であり、その多くは国内の治安に費やされる。だから、日本の脅威になることはない。恐れることはないという。

1930年代にように日本が中国大陸に深入りするような愚を犯さなければ、日中は共存できるという見立てである。

それよりも将来起こりうる日米関係の悪化の方がはるかに日本にとって、危険だとみる。米国が日本を敵視したら、石油などのエネルギーが確保できない事態に陥る。

いつか来た道ではないか。太平洋を挟んで向かい合う米国はいつでも日本の脅威になる危険性を備えている。ペリー来航以来、地政学的に最大の潜在的脅威の国家なのである。

では、どうするか。フリードマン氏は回答を示していないが、私なりに考えれば、だからこそ、集団的自衛権の行使を容認し、日米新ガイドラインに基づく安保法制の整備が不可欠なのである。つまり、日米同盟は中国や北朝鮮の台頭に備える以上に、日本は米国とともにあるという姿勢を示し、米国の疑心暗鬼を解消するために必要なのだ。

安倍首相はそこまで考えて今回の法整備に踏み切ったのかも知れない。また、安倍首相がトルコに首相就任以来、トルコに何度も足を運び、エルドアン大統領と親密な関係を築いているのも、トルコが親日的だからという以上に、将来の布石を考えているのかも知れない。

フリードマン氏の長期予測は当るも八卦、当らぬも八卦。だが、欧米には、こうした地球儀を俯瞰して長期予測を行う学者が少なくない。日本も、大きなスケールの予測がもっとあっていい。それが日本の政治外交を進化させる。