住宅市場は夏に向け気温が上昇するように、活気を取り戻しました。米8月NAHB住宅市場指数は2005年11月以来の水準へ舞い上がり、米7月住宅着工件数はリセッション前の水準を回復。向かうところ敵なしといった様相すら見せています。
アメリカン・ドリームのひとつ、マイホーム購入が手軽になっているからでしょうか?一部では、確かにそうかもしれません。広告代理店に勤務するご主人とレコード会社で働く奥様のアラフォー夫婦は最近、クイーンズで念願のコンドミニアムをお買い上げしていました。大手銀行で働くご夫婦も、ニュージャージー州で一軒家を取得。2組とも「低金利の今がチャンス」と言い切っていたのが印象的です。
誰もが夢見るマイホームを実現しやすくなっているかというと、そうでもないんですよ。前者のカップルは、同棲期間10年でようやく初めての住宅購入に踏み切ったんですから。それだけ、頭金を用意する時間が必要だったということです。指標が表すよりずっと、住宅購入の壁は高くて厚い。特にこの夫婦、金融危機でも継続して仕事をお持ちでした。比較的リーマン・ショックの傷が浅かったにも関わらず、NY市の住宅価格の高騰もあってなかなか手に届く不動産が見つからなかったそうです。
景気が回復しながら全米の4-6月期持ち家率が1967年以来の低水準であるように、住宅市場の過熱ぶりに反比例しマイホーム保有者はなかなか増えていない状況。金融危機で親世代の資産が痛手を被ったため子供世代が自分で力で頭金を用意しなければならず、ミレニアル世代を中心に住宅購入が困難になっていると考えられます。
家賃の高騰も、大きな要因を担っています。こちらをご覧下さい。
(出所:Zumper)
ブルックリンのウィリアムズバーグと言えば、今一番ホットなエリア。ヒップスターの聖地として知られるだけでなく高級住宅地として隆盛を極め、筆者の周囲でも国連、欧州大手銀行に勤務される方々のほか広告クリエイター、不動産関連の弁護士、ITエンジニア、会計士など高所得とされる方々が住んでいます。上記の写真はそのウィリアムズバーグでの新築物件で、家賃は1ルーム(スタジオ)で、なんと2850ドル(約35万3400円)也!最寄りの駅から約5分と便利な立地とはいえ1ルームでこのお値段ですから、1LDKや2LDKともなれば目玉が飛び出てしまう設定にクラクラしてしまいます。
こちらでご説明したように、ニューヨーカーの所得に占める家賃の割合が突出して高いはずですよね?
頭金を用意しづらい環境とあって、ニューヨーカーの持ち家率は惨憺たる有様で、米国勢局によると2009-13年時点で32.2%(NY州は54.2%)に過ぎません。
それより衝撃の映像が、こちら。
(出所:schwanksta)
ジャーナリストでWebデザイナーのKen Schwencke氏が作成した全米地図は赤のドットが賃借、青がマイホームを示します。ご覧のように、マンハッタンをはじめ丸が囲ったウィリアムズバーグ周辺など、真っ赤っかなんですね。
ニューヨーク市で住宅購入という夢が遠ざかるのであれば、他を目指すしかありません・・・。というワケで、筆者は新たな機会を頂いたこともあって、9月後半をメドに東京へ10年ぶりに舞い戻ります!ただ、ブログはこのままの形式と名前で継続したしますよ。10年間でNYに住めば、誰でもニューヨーカー!New York State Of Mindで米国関連情報を引き続きお届けしていきますので、今後もどうぞ宜しくお付き合い下さいませ。
(カバー写真:elysiumcore/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2015年8月18日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。