23日付けの日本経済新聞は食品値上げで家計の負担が増し、節約に動く消費者が増えてきた状況を伝えている。
原材料価格の高騰や円安によるコスト増で牛乳や食用油、小麦粉、パン、菓子など食品メーカーが値上げに動き、小売業はそれを店頭価格に転嫁。モノによっては仕入れ価格以上に値上がりしているという。
例えば、日清フーズは輸入小麦の政府売り渡し価格が上がったことなどを理由に、家庭用小麦粉の出荷価格を7月1日から約1~3%、国産パスタを約5~6%引き上げると発表していたが、スーパーの店頭価格の上昇率はそれぞれ3.4%増、6.5%増と出荷価格を上回る水準で推移している。
今春にJ―オイルミルズや日清オイリオグループが値上げした食用油の平均価格も、4月以降370円前後と3月と比べ約20円上昇。明治や森永乳業が値上げした牛乳は同177円前後と3月から約8円高くなっている。
企業業績向上を背景とした消費者の賃金上昇をにらみ、強気の値上げを広げていると言えそうだ。
しかし、それは長続きするだろうか。日経の記事によると――。
食料品の支出は14年度に年間84万円と前年度に比べ1万566円増えた。2014年度のエンゲル係数は24.3%と21年ぶりの高水準になった。2人以上の世帯では1年で0.7ポイント上がっており、今年も6月で25.8%と前年同月より0.8ポイント上昇している。……家計の「聖域」とされてきた教育支出は2483円減り、教養娯楽費も7938円減っている。食費が他の支出を圧迫する構図となっている。
値上げが増えて、今年のエンゲル係数はさらに上がる懸念が大きい。これでは、多少賃金が上がっても食費を増やすには限界がある。
実際、記事によると、「食費は無くせないが、少しでも安い物を探して買いたい。外食も控えるようになった」(主婦=47歳)、「以前よりチラシをよく見るようになった。安いプライベートブランド(PB=自主企画)商品を探して買うことが増えた」(主婦=61歳)という声が目立ってきた。
値上げに応じて、購入数量を減らす動きも傾向も強まっているようだ。
減らしても、それほど困らないからだ。日本人の多くは食べ残した料理を平気で捨てている。日本は食べ残す数量が購入量の4分の1を占める「残飯大国」と言われる。食べ残しを減らせば購入数量を減らせる。家計のフトコロが深いのだ。
ミネラルウォーターや茶系飲料を買うのを減らして、水道水を飲む回数を増やすという方法もある。
少子高齢化で、食料消費が構造的に減っているという事情もある。需要が減れば、小売業同士の顧客獲得合戦が強まる。その先には値下げ合戦が待っている。
中国経済の変調→株価下落の動きがこれに拍車をかける。コトは食品に限らない。例えば、7月の国内ユニクロの既存店売上高は前年同月比1.5%減と、2012年10月以来、33カ月ぶりに2カ月連続の前年割れとなった。昨年の秋冬物値上げに続き、今年も秋冬物で平均10%の値上げを計画している同社にとって大きな懸念材料だ。
選択的消費支出の割合が高い衣料品や服飾雑貨はタンス在庫があふれ、流行を気にしなければ実用的には1,2年、買わなくても困らない。家電、パソコン、乗用車なども大なり小なり同じことが言える。
魅力的な新商品を出さない限り、単なる値上げは息切れしそうな雲行きだ。デフレ脱出は容易ではない。