今週の出来事から 雇用統計、エンブレム…

岡本 裕明

今週もいろいろありましたが、まだカバーしていない内容を中心に纏めてみたいと思います。

まずはアメリカ8月度雇用統計です。これは9月16-17日に予定されているFOMCに於いて利上げの行方を決める大きな判断材料の一つになるとされてきました。その結果は事前予想の217千人増に対して173千人増で着地となり、失望感を誘いました。特に悪かったのが製造業と鉱業でそれぞれ17千人、10千人のマイナスでした。

一方で失業率は5.1%と数字だけを見ればほぼ完全雇用に近い状態でありますが、実態としてはジョブマーケットから退出した人が41千人いたことが効いており、一種の統計のいたずらに近いものがあります。多少、間引きして考えた方がよいでしょう。賃金は0.3%増でこれは悪くないと思います。

さて、この雇用統計を受けてイエレン議長はどうするか、でありますが、個人的には9月の利上げはほぼ消えたとみています。それは乱高下しながらも下落基調の原油価格と株式市場の行方、中国の行方、更にはブラジルをはじめとする新興国の経済不振にドル資金流出と正にフラッジャイル(=fragile 壊れやすい)な経済状況にとどめを刺すことになるからであります。仮に中国の経済不振が更に深刻化するなら年内の利上げどころではなくなります。

もう一つはアメリカ自動車販売がどうもピークに達している感があることもあります。その9割がローンで購入しており、その貸出残高は1兆ドルを超えました。うち、いわゆるサブプライムとディープサブプライムの貸し出しが2割を超え、住宅版サブプライムの二の舞がいつ起きてもおかしくないのであります。また、売れる車が軽トラックと高級車に偏っており、大衆向け乗用車の売れ行きは統計的にはずっとマイナスなのが気になります。

私が利上げをしないであろう、と考えるもう一つの理由は東京株式市場の金曜日の相場つきに見る不安感です。金曜日の東京は一時500円以上下げ、終値は390円安。この日は上海市場はお休みでしたが弱気になる理由は週明けの上海市場が怖い、というものでした。つまり、式典が終わったので緊張の空気が抜けるだろう、と考えている節があります。おまけに言いたくないですが、「エルルの29日」である9月13日を控えます。残念ながら東京市場はチャート的には底抜けしました。下値を探る展開ですが、まずは16000円台後半を探る展開になってしまいます。来週は市場に嵐がくるかもしれません。

話題を変えましょう。

佐野研二郎氏のエンブレム問題ですが、ここまでくるといろいろ想像してしまうのですが、デザインをピュアにゼロから考えるデザイナーがどれぐらいいるのか、私には疑問です。私の知る同職の方々はいつもいろいろなデザインを見て、研究しています。ですので佐野氏は意図せずにどこかで見たそのデザインが頭の中のファイルから出てきてしまった、という気がしてならないのです。

私がこの問題を今日取り上げたのは別のところにあります。エンブレムを取り下げた日のマスコミの見出しは「国民の納得が得られない」でした。つまり、ベルギーとの訴訟に勝てる自信があり、盗作ではないと客観的に証明できたとしても国民はハッピーではないから止める、でした。同じことは新国立競技場でもありました。あのまま、プロジェクトを進めれば「国民の理解が得られない」だったと思います。

安倍首相。なかなか、苦しい立場にあると思います。安保関連法案。「国会を通せば何でもできるのか」という切り口を与えた気がします。反対者のデモがあれほど大きくなるとは想像していなかったでしょう。正に祖父の岸元首相が60年安保を通す時のシーンが再現されようとしています。その時岸首相が残した言葉は「安保改定がきちんと評価されるには50年はかかる」であります。あれから55年。どう評価されたでしょうか?

それを思うと自民党総裁選で安倍首相が無投票で再選されるのは逆に言うと後ろ盾をなくす危険があります。私ならバックアップで対立できる候補を必ず立てさせます。これは戦略です。表面的な「一枚岩」の話ではないと思います。逆に他に候補が出ないのなら自民党はあるボタンを押せばガタガタになるリスクを思いっきり抱えるということになりかねません。

来週はいろいろありそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 9月5日付より