中国経済が踊り場を迎えていることは間違いないことです。少しずつ成長速度も鈍化していくのでしょう。過去に打った経済対策で不良債権が積み上がっているのも事実です。しかし、それでも中国経済が破綻したわけでもなく、経済成長がまだ止まったわけでもありません。それよりも円安と株価高で、みかけの好景気をつくっただけで、アベノミクスは、いまだになんらの成果がでていません。経済は低空飛行を続けており、中国経済の不振よりは、国民にとっては、そちらのほうがはるかに深刻な問題です。
韓国や資源国は中国経済の減速の影響が大きく、またとくに韓国の場合は台頭してきた中国の産業との競合もあって、輸出は今年の1月から減少に転じたまま下落し続けています。しかし日本の場合は、空調関連や工作機械の輸出や販売などは厳しくなってきたとしても、すくなくとも中国との貿易額は、この7月まで5ヶ月連続で増加基調が続いています。
また、中国国内での自動車販売も、ドイツ車、米国車、韓国車の絶不調とは対照的にこの7月まで大きく日本車が伸びてきています。8月もトヨタが前年同月比で20%増と好調を維持し、やはり中国市場で好調なホンダはなんと50.7%増を記録しています。
ホンダの中国新車販売50.7%増 8月、6カ月連続プラス:日本経済新聞
6月にはじまった中国の株価下落ですが、中国からの訪日観光客は、6月は前年同月の167.2%増、つまり昨年のおよそ2.6倍強となり、7月も105.1%増でした。爆買いがなくなるという懸念もなんのそので、旺盛な消費意欲は消えていません。韓国のMERS騒動が収まったので、その特需的な訪日客はなくなるかもしれないとしても、いまだに旅行先としての日本人気は高まるばかりです。
中国人観光客の消費意欲続く 経済的混乱の影響最小限 – WSJ
そして、いくら「抗日」一色に天安門を染めても、あるいは情報の統制を行っても、今では実際に日本を体験し、日本の実態に触れた中国人がどんどん増えてきているので、中国も国民すべてが同じ方向に向くという時代でもなくなっているようです。抗日式典は、いったいあれはなんだったのかと思えるほど一瞬の風のように通り過ぎ、懸念された経済への影響も杞憂に終わったようです。
中国の抗日式典の余韻に浸っているのは韓国ぐらいでしょうか。これで北との統一外交が進んだと朴槿恵大統領の支持率が高まったようですが、中国にとっては国境線上の緩衝地帯となり、いまや経済的には実質植民地化した北朝鮮をそうそう簡単に中国が手放すとは考えられません。
また、中国がより付加価値の高い産業へと移行させる構造改革を進めようとすると、韓国の産業との競合がこれまで以上に強まってきます。そうなると朴槿恵大統領や韓国メディアが期待する中国とのWIN-WINの関係づくりは極めて難しく、むしろ中国が狙っているのは、 韓国の無力化ではないかとすら思えてきます。
いずれにしてもアジア経済圏を牽引してきた日本も、中国も、韓国も、高齢化と労働人口の減少による衰退の火種を共通して抱えています。どのようにその課題を克服するのかの見通しはないままです。
人口減と少子高齢化は確実に日本の強みであった豊かな国内市場をも縮小させていきます。いや産業構造の転換や所得政策もうまく行ってません。さらに今回の消費税の還付方式は、さらに国内市場を弱らせ、日本経済の慢性病を悪化させかねない代物です。
経済対策だと考えれば、飲食料品の消費税をゼロにするか、引き下げるというのが正解なはずですが、マイナンバーカード利用による還付方式という、生活者感覚も、ビジネス感覚も欠けた発想がでてくるようでは、日本の官僚組織の能力やセンスが心配になってきます。財政再建といえばなにがなんでも国民から税を吸い上げることしか考えないというのではなく、もっと自国経済を発展させるためにどうすればいいのか、政治家や官僚のかたがたには、もっといい知恵を絞りだしてもらいたいものです。