マクドナルドは経営目線を変えよ

岡本 裕明

マクドナルドの8月度の成績は売り上げこそ19か月ぶりの2.8%増となったものの既存店客数は28か月連続の3.3%のマイナスとなりました。メディアの報道を見ているとマクドナルドはようやく長いトンネルを抜けつつある、と評しているように見えるのですが、そんなことはないとみています。

昨年7月の使用期限切れ鶏肉事件で売り上げ、客数とも大幅に落とした結果、一般的に使う「前年同月比」はもともと事件でハードルが思いっきり下がっている状態であります。ところが、ちょうど1年たつと比較する数字が低くなるので前年に比べてとても成績が伸びたようにみえるのです。一種の統計の読み方のポイントなのですが、同社は7月はハードルが下がっているにもかかわらず既存店売り上げ、客数とも大きく下げており、改善は遠いと思っていました。よって8月に売り上げと客単価に若干のプラスが見られますが、トレンドを変えるほどではない気がします。

北米からの報道では北米マクドナルドは今後10年かけて卵をフリーラン(Free-run)のものに変えていくとしています。いわゆるFree-rangeは鶏を屋外で放し飼いにするのに対してFree-runは屋内で放し飼いにします。「ニワトリへの配慮」のようですが、これでは養鶏のシステムを根本から覆すため、養鶏場が追いつかず、10年がかりのプロジェクトになるとのこと。マクドナルドは本家本元でも必死にイメージ改善を図っています。

私はいわゆるチェーン店ビジネスの曲がり角にあるように思えます。多店舗展開した場合、何らかのきっかけでその経営が否定されたり、不人気になった時、方向転換しにくいというリスクを負います。例えば、卵を10年かけて替えるプロセスに於いてどの店ならfree runの卵なのか、消費者は知るチャンスがあるのか、フランチャイズ同士で揉めないのか、等いろいろ詮索してしまいます。

10年という気の長い話をするならいっそのこと、別ブランドを立ち上げてしまった方が早い気がします。もともとあの赤い看板、黄色いMのマークは見飽きた、陳腐化、エレベートしたイメージはない、安いところといった具合にポジティブな意見が出てきません。ところが店の中は改装を進め、場所によってはなかなかおしゃれなスタイルにしています。つまり、ちぐはぐな気がするのです。

それならばブランディングの差別化を図るべきでしょう。この手法を取り入れた業界としては自動車やホテルなど一般的であります。トヨタとレクサスは代表的自動車の差別化。ホテルならスターウッド系列の場合、ウェスティン、シェラトン、W,セントレジスなど10のブランドを使い分けています。航空会社でもエアカナダはルージュというLCC的ブランドを使い分けています。

ハンバーガーは北米では一般的なものと高級バーガーに分類できます。だいたいどのレストランに入ってもハンバーガーがメニューにあるのはそれぐらい市場性があり、各レストランは店の冠を付けたバーガーの開発をしているものです。ところが日本ではハンバーガーはファーストフードというイメージを先に定着させてしまい、レストランで高級ハンバーガーを食べさせるところはほとんど育っていないのです。(ファミレスでも割と少ないし、全面的に売り出しているようには思えません。)

つまり、ブランディング化し、店舗をよりレストラン風にして高級バーガーを食べさせる市場は未開拓だと思うのです。マクドナルドが手を変え品を変え、新製品を投入していますが、どれもこれも流出する客を引きとどめる効果はあっても新規の客を呼び込めず、思想が同じところをぐるぐる回っているだけに感じます。

北米のレストランビジネスに於いて客単価を上げるには店のイメージも変え、サーバーのクオリティも上げなくてはうまくワークしません。日本のマクドナルドは一定の枠から飛び越えられない罠にはまっていないでしょうか?

マクドナルドはファーストフードのリーダーを目指すのではなく、ハンバーガーのリーダーになるという視点に変える必要があるように思えます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 9月11日付より