首相、携帯値下げ指示の唐突さ

安倍首相が経済財政諮問会議で高市総務大臣に「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題」と述べ、携帯電話料金引き下げへの指示をしました。これを受け、14日のNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの株価はそれぞれ9.8%、5.5%、8.6%の大幅安となりました。いわゆる携帯契約の2年縛りを懸念したものだと見られています。

正直、この発言に唐突さを感じないわけにはいきません。

安倍首相は無投票にて自民党総裁に選ばれた際、経済をよくするということを改めて表明しています。その中で特に噂されるのが疎遠になっている黒田日銀総裁との協調によるデフレからの明白なる脱却と経済の活性化であります。

事実、一部では日銀による再度の量的緩和の呼び声が再び高まりつつあるのは一つに株価対策でもあるわけです。14日に再び18000円を割ってしまった日経平均は今週、イベントが多いこともあり、投資家の動きが取りにくいということもありますが、上海市場が安く始まった途端、日経平均は100円以上するっと下げてしまいました。先日、東証の主導性ということを書かせていただきましたが、正にその典型的病状が出てしまいました。

そんな中、この時期、このタイミングでなぜ、携帯電話料金を下げるという命題を出したのか、さっぱりわかりません。携帯電話の価格下落はインフレ率の計算に結構響きます。よって、これが下がると経済指標的にはディスインフレ効果を招きやすくなります。既に日本は物価のプラスを維持できるのか、という見方も一部ある中で明らかにマイナス方向のバイアスがかかってしまうのです。

その上、稼ぎのよい携帯各社の株価が下落することも気になりますし、それらは日経平均採用銘柄ですから日経平均に影響しやすくなることも当然あるわけです。つまり、この時期にそんな指示をするのは私から見れば良いことはひとつもないのであります。もう一言、言わせてもらえれば、それを受けた株式市場でにぎわったのがスマホゲーム関連株。その心は携帯電話料金が下がればその分をゲーム代に回せる、であります。何かおかしくないでしょうか?

首相は誰かに携帯料金のことを指摘されたのではないでしょうか?それを受けての発言で下から上がってきた報告を受けての指示ではない気がします。とすればちょっと軽率だったのではないでしょうか?

携帯に関していえば、今やらなくてはいけないのは携帯料金よりも街中のWiFiの統一化を早急に図ることと無料エリアを拡充することでしょう。特に外国人が1700-1800万人も訪れる国になったのに外国人からするとこれほどWiFiの整備が遅れているのは大いなる問題であります。彼らの情報源は今や、手に持つスマホだけと言っても過言ではありません。それが使えるようになるのか、ならないのかでその印象は全然違うのです。

首相も大変な時期にあります。安保関連法案も最後の山場、審議の答弁を聞いていたら「いつかは必ずわかる日が来る」と岸元首相と同じことを述べています。一方、もっと懸念しなくてはいけないのは辺野古問題で揺れる沖縄でしょう。これについては日を改めて書くつもりですが、非常に大きなギャップが生まれつつあります。そして沖縄の動きは中国に大変利することになります。今頃、習近平国家主席はほくそ笑んでいるはずです。

大変な時は小手先のことをせず、まずは目先の大きな課題にとりんでいただいた方がよろしいかと思います。携帯の価格を下げるという個別問題にかかわっている余裕はないでしょう、安倍首相。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

岡本裕明 ブログ外から見る日本、見られる日本人 9月15日付より