日本の不動産は2極化ではなく「3極化」が進んでいる --- 内藤 忍

日本経済新聞によれば、国土交通省が9月16日に発表した2015年7月1日時点の基準地価は東京・大阪・名古屋の三大都市圏よりも、金沢、仙台、福岡といった地方都市の商業地の方が上昇するという結果になりました(図表も日経電子版より)。

大都市圏の商業地は平均で2.3%の上昇で、前年(1.7%)を上回っています。それに比べ、住宅地は0.4%の上昇に留まり、前年(0.5%)とほぼ同水準です。

注目すべきは地方の中核都市での地価上昇です。金沢、札幌、仙台、広島、福岡といった都市の商業地や住宅地の上昇は三大都市圏を上回りました。金沢は新幹線の開通、仙台は地下鉄東西線の2015年12月開業といったインフラ整備による不動産の価値上昇ですが、要因はそれだけではないように見えます。

東京都心部の地価が高騰し、投資対象として魅力が薄れたと判断する投機的な資金が地方中核都市に流れ、それが不動産価格の上昇につながっていると考えることもできるのです。

このように地方の一部は不動産価格が反転していますが、地方圏全体の地価の下落幅は全用途で1.5%と引き続き厳しい状況です。例えば、秋田県は商業地が4.6%、住宅地が4.0%の地価下落となっています。

今回の発表を見ると、日本の不動産は2極化ではなく、「3極化」が進んでいるように思います。上昇が一服しつつある3大都市圏、資金が流れ込み上昇率が高くなってきた地方中核都市。そして、下落が続いている、それ以外の地方という構図です。

不動産投資は、値上がりによるキャピタルゲインも狙う投資家もいますが、それは一部の上級者。安定した賃貸(インカム)収入を目的に投資をしていくのが、王道です。日本の不動産の場合、借入を組み合わせて、レバレッジをかけることになれば、返済のために安定した賃料は一層重要になります。

価格の上昇に目を取られるよりも、インカム収入と、管理コスト、さらに空室リスクや将来の賃料下落リスクなどを勘案して、「リスク調整後のインカム」と借入金の返済との関係を見ながら投資判断していくのが賢明だと思います。値上がりによるキャピタルゲインは、投資の目的ではなく、結果として得られる付録のようなものと考えておいた方が良いでしょう。

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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年9月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。