デジタル教育、総務省・文科省との論議 --- 中村 伊知哉

デジタル教科書教材協議会DiTTシンポ@慶應。
DiTT提言2015「教育情報化推進法の制定を」を発表しました。デジタル教科書正規化、1人1台端末、無線LAN整備、クラウド教育、ソーシャルメディア利用、ビッグデータ活用を総合推進する法律を策定しましょう。

これを踏まえ、総務省南政策統括官、文科省豊嶋情報教育課長に登壇いただき、考えを聞きました。

総務省南さんは学校でのICT利用が日本は諸外国に大きな遅れを取っていることを紹介。学校でPC利用した学習に取り組む割合は、OECD平均37%、日本4%。学校外で宿題をする割合は平均67%、日本8%。すさまじい遅れです。

小中学校のPC整備率は米3.1人に1台、シンガポール4.0人、韓国4.7人、対して日本は6.5人。大きく遅れています。1人1台への道のりは険しい。

総務省南さんは、BYOD、クラウド教育、SNS教育利用、プラットフォーム、教材標準化・オープン化まで明解に踏み込んで話してくれました。1人1台・デジタル教科書を大きく超える政策論。早くそちらに進みましょう。

文科省豊嶋さんから、タブレット端末導入に取り組んでいる自治体は158との報告。1700自治体の1割弱です。進んではきたけど、まだまだ。

豊嶋さん「タブレット導入はイヤだという自治体はない。手が回っていないだけ。」
そうなんですね。自治体に手当された地方交付税を使って導入を促しましょう。

総務省南さん「いずれBYODは進む。学校や自治体が統一機種を導入する状況から、家庭や先生が選べる状況へ。」

機種選定で悩む自治体もありますが、それを過渡期の姿にするということですね。まずは自治体にがんばってもらいつつ、その先のBYODを見据えて、クラウド化や標準化などの政策を組み立てておくと。

また、ビッグデータの教育利用は、総務省だけでなく文科省も検討するとのことです。すばらしい。早くもカベを取っ払ってくださいますか。

このように真剣に進めてくれている関係者と議論をしていて感じるのは、教育情報化の最大のネックはもはやデバイスや教科書ではなく、ネットワークとセキュリティであるということ。いよいよここに政策資源と民間投資を集中投入する必要があります。産官学をあげて取り組みたく。

ところで、1人1台などの教育情報化策を唱えると、必ず(批判じゃなくて)悪口がネットで飛んでくるんですが、そのかたがたって教育をどうしたいんですかね。オモテで議論ができればいいんですが、そうはならない。なんとなくイヤ、という空気が、最後の、しかも最大のカベと感じています。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年9月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。