風評被害一掃!福島産品応援の動き広がる【復興進む福島6】

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エネルギーフォーラム編集部

福島産食品などがむやみに避けられる風評被害は、震災から4年以上たってもなお根深く残り、復興の妨げとなっている。風評被害払しょくを目指す活動は国や県だけでなく、民間でも力を入れている。消費者の安心につながる食事全体での放射線量の調査や、企業間で連携した応援活動など、着実に広がりを見せている。

(写真)福島が全国2位の出荷量の名産の桃

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(提供)福島県観光協会

食事の調査で安心広げる

消費者庁が行う風評被害に関する意識調査では、「福島県産品の購入をためらう」という回答が、今年2月の調査でも全体の2割弱を占めた。また、東京都中央卸売市場での福島県産品の単価は、震災以降どの品目も全国平均より低い水準が続く。価格差は徐々に改善されているが、震災前の状態までは戻っていない。

県では、農畜水産物の放射性物質量のモニタリングに加え、米や牛肉では全量検査を実施。特産品のあんぽ柿は、一大産地の伊達市のモデル地区で全量検査の体制を取る。テレビコマーシャルやトップセールスに加え、県産品の魅力を伝えるシンポジウムやメディアセミナーなども開催し、PRに尽力している。

そうした中、生活協同組合コープふくしまでは組合員の不安に向き合い、食事の調査を2011年11月から実施している。普段の食事をもう1食分余計につくり、セシウム134、137、カリウム40を測定する取り組みだ。参加者は2日分の計6食と、間食や飲料も含めて摂取したものすべてを冷凍保存する。

日本生活協同組合連合会(日本生協連)の商品検査センターに送り、ゲルマニウム半導体検出器(検出限界値は1kg当たり1ベクレル)に約14時間かけ、測定結果を参加者にフィードバックする。ほかの生協でも実施しているが、コープふくしまでは11年度に100家庭、12、13年度に各200家庭、14年度に100家庭を対象とし、多くのデータを蓄積してきた。今年度も100家庭で行う予定だ。

(図表1)100世帯の陰膳

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コープ福島資料

これまでにセシウムが検出された件数はわずかで、最大値は初年度の11ベクレル。検出の放射性物質はどの食品にも含まれるカリウム40が大半だ。検出数、検出値ともに年度を経るごとに減り、14年度は全食事で検出されなかった。(図表1)

宍戸義広常務は、「市場流通している食品を使う限り、食事全体でも心配するような値にはならない」と話す。傾向が掴めるにつれ組合員の安心感も広がってきたようで、「行政も行っていない調査に参加できて良かった」、「福島で暮らすうえでこうした調査は大切」との声が挙がっている。「不安を持たれる人も多く情報発信を継続していく。自主避難を続ける人もいる中で調査を継続する意義は大きい」(宍戸常務)と説明する。

また、農協や漁協などほかの協同組合と連携する「福島応援隊」では、夏は桃、冬はリンゴなどの販売を協賛企業などにあっせん。基幹産業の復興を後押ししようと生産者からは通常の価格で買い取り、正常な流通の仕組みを取り戻すことを目的としている。

今夏の桃の販売量は4400ケースに上るなど、販売先の裾野が広がってきた。「震災前から福島産は西日本にあまり出回らなかったが、全国に発信できることが大きな成果」(根本茂・営業企画担当部長)と実感する。注文票の裏面には生産者へのメッセージ欄を設け、これまでに約4000人分の声が届けられた。応援隊をきっかけに、産地や生協と交流する企業も出てきている。

企業発の取り組みも着々と

首都圏でも企業発の動きが出ている。現在17社が参加する「ふくしま応援企業ネットワーク」は、個別に行ってきた支援を大手企業が協力して取り組もうと、14年11月に発足。発起人の東京電力が事務局を務める。

活動内容は県の意向も聞きながら固めてきた。これらの企業は、社員食堂での福島産食材の取り扱いや、企業マルシェ(企業が行う農産品などの展示販売)の開催、会議や観光での福島県内施設の利用促進などを柱に掲げる。社食の活用では、15年度は福島産米が9社の食堂約280カ所で常時提供され、消費量は約500トンになる見込み。企業マルシェは14年度に8社でのべ127回開催し、売上が4900万円となった。

社ごとの活動内容は各自の判断に任せている。例えば鹿島建設では、社内の売店で取り扱う手土産を福島のものに変え、福島産をアピールするシールも新たにつくった。ほかに、マルシェをビルのオープンスペースで開催し社員以外にも販売したり、福島産品の通販利用を子会社も含め呼び掛けたりと、多様な内容となっている。

今年5月に郡山市で開いた定時総会後には、参加者が農園を訪れて生産者と意見交換した。今後、農業体験などの新たな活動も各社に呼びかける予定だ。「現在は福島全体の応援を意識した活動だが、ゆくゆくは浜通りの復興再生をどう後押しするかを考えていきたい」(ネットワーク事務局)と、息の長い活動を目指す構えだ。

小売り大手のセブン&アイ・ホールディングスは、東北の被災企業などと連携した「東北かけはしプロジェクト」を11年から実施。今年7月からの第12弾では、復興庁と連携した商品など約1900アイテムを取り扱う。福島産品では、県オリジナル品種の米「天のつぶ」の加工食品などが並ぶ。「東北各県の農畜水産物を新たな食べ方も含め提案し、ファンをつくっていきたい」(同社)という。

震災前以上の水準目指す

県も今年度、風評被害対策の見直しを進めている。風評・風化対策を強化するため、部局横断的な取り組みを検討するプロジェクトチームを立ち上げた。「これまで安全性やおいしさのイメージアップをPRしてきたが、さらに取引量や価格をもとの状態に戻したい」(県農産物流通課)と強調する。東京には県が中心になってアンテナショップ「日本橋ふくしま館MIDETTE」を開設している。

今年のキャッチコピーは「ふくしまプライド」。生産者が誇りを持ってつくったものを食べてもらいたいとの思いがこもっている。「ブランド力や産地競争力を高め、震災以前の水準をさらに飛び越えるという気概で取り組みたい」(同)と前を向く。

(この記事はエネルギーフォーラム9月号に掲載させているものを、同社から転載の許諾を得た。関係者の方に感謝申し上げる。)