日本は新しい時代を迎えることになります。TPPはいまや、好き嫌いの問題ではなく、それとどううまく付き合っていくかという課題を我々国民に示すことになります。
TPPにより影響するであろう農業や産業界、更には国民への直接的影響は今後、時間をかけて吸収していかねばならないのですが、そのあたりは他のメディアで取り上げるでしょうから私は違う観点をフォローしたいと思います。
日本が海に囲まれた孤独の国でガラパゴスを謳歌することが徐々に難しくなる、これが私の想像する日本の20年後であります。それはより強化されるであろうグローバル化によりモノの生産やマーケティング、流通、消費は一国内で完了していたかつてのサイクルからあらゆる国を経由することが当然のプロセスとなります。それは商品に世界標準が当てはめられるということでもあります。つまり国民生活がこの世界標準に合わせるように変わっていくのです。
分かりやすい例を言うと日本が開国してから西欧の食べ物が数多く紹介されました。そして戦後、高度成長期の子供たちはカレー、ハンバーグ、スパゲティといった洋風の食生活が中心となりパン食も圧倒的に増えました。この結果、高カロリーで肥満児が増えるなどの問題が生じました。また咀嚼する回数が減り、あごの部分がすっとした顔つきになりました。住むところも畳からイスに変りました。いまや、胡坐をかけない若者は結構います。
もちろん、今回のTPPでかつてのような衣食住に於ける革命的変化は生じないでしょうが、多くの製品やサービス、更には農産物に於いてどの国でも似たようなものを消費する時代がくるはずです。
モノが国際化すると同時に日本で国際人がより多く求められるようになります。これも間違いありません。
では、日本で国際人やグローバル化に対応できる人材は十分にいるのでしょうか?育ってきているとは言われていますが、全く十分ではないという声があちらこちらから聞こえてきます。例えば日本のアニメを世界に発信するといっても英語を駆使できるアニメ業界の人は皆無に近いと言われています。住宅業界がオーストラリアや東南アジアに進出することを発表していますが、人材はまず足りていないでしょう。(というより、頭数はあっても国際標準やその国のスタイルにそったビジネスが展開できる人材はいないということです。)
ここから類推すると日本では国際人養成が急速なテーマとなってくるはずです。最近では「スーパーグローバル」シリーズの高校や大学を行政が推し進めていますが実態はまだまだです。よってTPPが発効するならば若い人を中心に本格的な国際派人材を早急に養成する必要があります。
もう一つ、TPPで変わることがあります。それは世界地図です。今までは欧米という大西洋をはさんだ主要都市間で政治や経済が動いていました。北米に於いてニューヨークとトロント以外は田舎と今でも豪語しているようです。その裏付けは金融を中心とする経済が主導していたのです。
ところが今やアメリカではサンフランシスコやシアトルあたりから新しいビジネスが生まれてきます。バンクーバーやサンフランは新しいタイプの人間を気持ちよく受け入れてくれるオープンさがあり、大西洋側とは一線を画しています。環太平洋と名のつくTPPはまさに北米西海岸とアジア東部がその中心的交流になるという意味で世界地図は大西洋は真ん中には来ないで太平洋が真ん中に来るようになるでしょう。つまり、NYは地図の一番右端、ロンドンは左端という具合です。勿論、その場合、日本は世界の中心になります。
こんな視点でモノをいう人は世界で私ぐらいでしょうが、多分、このセンスは10年後に分かってもらえると思います。
TPPが発効するとすぐに何か変わるわけではありません。ただ、時間と共に参加国の目線や感性が少しずつ影響を受けて域内の投資が進み、「共同体的進化」が起きるのでしょう。そういえば先日、マル経ながらも大家である大塚久雄先生の「共同体の基礎理論」という名著の教科書をもう一度目を通しました。資本主義の生まれるはるか前の姿がその教科書にある共同体であったわけですが、もしかすると我々はそこにまた戻ろうとしているようにも感じます。そうだとすれば時代は超長期の循環をするということなるのでしょうか。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月6日付より