ギャンブル依存症は「社会の病」として捉えるべき --- 天野 貴昭

こんにちは、エアグランドの天野です。
普段は障害高齢者向を対象とした機能訓練と運動選手への動作解析指導を営みつつ、業務の傍らSNS上を中心に政治・文化活動に関わる分野へ情報発信を続けています。


※厚労省調査で患者が530万人とされるギャンブル依存症。「社会の病」として対策が求められる。(写真はイメージです)
パチンコ(フリー素材)
今回ご縁を頂けましたので、この場をお借り致して「ギャンブル依存症」について、皆さんと見識を深めて行ければと思っています。

本症については昨年NHKで特番が組まれましたので、記憶に新しい方も多いと思いますが、僕的には此方の新田哲史氏のエントリーがわかりやすかったので、ぜひ併せてご覧ください。

では、はじめにギャンブル依存症について基礎的な情報を確認していきます。

①「脳の変成を伴う病気だ」という事

ギャンブル依存症は進行すると脳に変化が起こる事がわかっています。
従って、進行するとMRIなどの画像診断でわかるケースがあります。

脳自体にトラブルが発生してますから、根性や気合いでの回復は極めて困難ですし、叱っても大きな効果は望めません。

※詳細は新田氏のエントリーでも紹介のあった田中紀子氏の書籍にも紹介されていますので併せてご覧下さい。

ギャンブル依存症 (角川新書)
田中 紀子
KADOKAWA/角川書店
2015-09-09



②「薬で治す病気ではない」
(認知行動療法というのですが)ひらたく言うと「こころのリハビリ」的なアプローチとギャンブルの遮断(禁煙みたいなものです)が治療の中心になります。
…というか、正直な所「画期的な治療薬が未だ開発されていない」というのが現状です。

③「多くの潜在患者数が推測されている」
新田氏のエントリーにもありましたが、昨年の厚労省の調査で530万人程潜在する可能性があるという報告が出ました。これは日本の人口の約5%にあたり、糖尿病患者数(約900万)のほぼ半数、人工透析患者数(約30万人)の15倍以上です。

④治癒がなかなかに困難である
いわゆる高血圧症や糖尿病(二型糖尿病)と同じく生活習慣病と同じ様なものだと解釈ください。

では、ここから私見です。

現在、この病気は積極的に啓蒙活動がなされています。
とても大切な事ですので今後も注目させて頂きたいと思っていますが、同時に僕は病気の周知だけが先行しても大きな成果は得られないとも思っています。

これまで解っている情報をまとめると、我が国には糖尿病患者の約半数程度の、薬のあまり効かない生活習慣病患者がいるかもしれないーーーという事になります。

薬でのコントロールに限界がある訳ですから、然るべき医療機関への継続的加療が必要となります。
それは現在日本の会社・雇用形態では不可能だ、といって良いと思います。

患者の多くは(勤務の為)現実的に加療出来ない事が予想されます。症状の悪化を忍耐で乗り越え続ける事になるでしょう。つまり今とほぼ同じです

場当たり的な罰則強化では体力の無い中小企業の経営が行きづまるだけです。

「君達(患者)が会社に在籍することは法により保障されている、だから君達を解雇することはない、しかし君達がいると会社は倒産する」ーーこれでは患者が会社内で孤立することが容易に推測されます。

また、その様なリスクを回避する為、企業側は入社試験にストレステストを導入する様になるでしょう。結果的にどんなに優秀でもストレス耐性が低いと判断された人材が問答無用で就職困難になる懸念が新たに発生するという事です。

ひとつ大切な事を書き忘れていました。

ギャンブル依存症には既に一定の遺伝性が確認されています。
ご両親がギャンブル依存症だと、そのお子さんがギャンブル依存症であるリスクが高まる、という事です。

つまり社会形態が今のままだと、ギャンブル依存症患者は就職のみならず結婚にまで差別的影響が及ぶ可能性があります。

大胆に言い換えさせて頂くと、僕はギャンブル依存症は人の病気ではなく、社会の病気と捉える必要があると考えています。

この人の治療に先立って社会の治療が必要である事こそが、本症の最も重要で難解な部分だという事です。

では我々はどうやってこの社会という名の重病人を治療していけば良いのでしょうか?

正直に申します。
「全然思いつきません」…おい(汗)

強いてあげるなら
・ギャンブル依存症を治す事よりギャンブル依存症のまま勤労・生活が出来る社会構造を模索する
・国の収益を上げて治療環境費に充てる

…という、まさに絵に描いたモチ的な施策しかないです(現在の所は、ですが)

苦肉の策で思いつくのはカジノ解禁です。
予防的見地からカジノ設立に反対する声も少なからず見聞きしますが、僕はカジノチップ発売時に指定の会員カードの掲示を求め、年間利用額が20~30万円を越したら専門医の診断書提出を義務づける事で、カジノとギャンブル依存症は区分できるかな?と思うのです。

皆さんはどう考えますか?

天野貴昭
トータルトレーニング&コンディショニングラボ/エアグランド代表