あるパーティーで著名な美容室のオーナーと隣り合わせになりました。以前からその方を見るたびにあるオーラを感じていました。何故だろう、とずっと思っていたのですが、その時、自分の中で氷解しました。
女性が美しく見せるためにどんな努力をするでしょうか?素敵な洋服を着る、美しいアクセサリーを身に着ける、靴?鞄?もしかしたら化粧でしょうか?私はヘアだと思うのです。きちんと手入れしているかどうか、これが私の見る決め手です。
私の友人は趣味が高じて歌を歌っていますが、驚くなかれ、歌う前には専属の美容師さんが会場でセットをします。プロ並みです。勿論、素敵な衣装も身につけますが、要はバランスであります。若い人には美容室に年1-2回しか行かない人が結構いるそうです。自分で切るから、というその本当の理由は高いからなのでしょう。洋服やアクセサリーといったモノは安くなるのですが、サービスの価格はそうは下がらないものなのです。
少なくとも高齢になりつつある方々の消費はモノを買うより良いサービスを受ける方向に変ってきています。知り合いが北極に行ってきたと自慢していましたが、そんなたぐいの話は今や、あちらこちらから聞こえてきます。
では若い人を含めたトレンドはどうでしょうか?
今、再び省エネが大きなテーマとなっていないでしょうか?ゼロエネ住宅が少し前の日経の一面を飾っていましたがこれは電力販売自由化の更に一歩先を行く発想でしょう。自動車を見れば新型プリウスは燃費が40キロという話ですが、資源に極力頼らないライフを作ろうとする動きが主流になってきています。
世界中で見られるのは消費のスタイルが大きく変わってきたということではないでしょうか?フランス人は質素な生活をするという類の本が日本で売れていました。(私も読みました。)最低限のモノしか持たなくても十分幸せな生活が出来るというトレンドは決してフランス人独特の気質というわけではなく、イギリスも北米も同様だと思います。日本で「断捨離」という言葉が流行っているのもいらないものを処分し、すっきりしたライフを過ごすという新たなトレンドでしょう。
これは今の50代から上の人たちと明らかに違う消費スタンスです。いわゆるバブル世代はより多くのモノを消費することを良しとしていました。これがほぼ180度転換してしまったのが今の30代以下の世代でしょう。これは海外でも同じです。大前研一氏は「低欲望時代」と称し、そんな時代に2%のインフレターゲットを設定すること自体が間違っていると述べていますが、言わんとしていることはケインズ型の経済から既に脱皮していないか、という提起でしょう。
これが正しいかどうかは別としてサービス型消費へのシフト、省エネに伴う資源などの消費量の低下、シェアエコノミーと称する所有型社会からの離別がお金の使い方を大きく変えてきていることは紛れもない事実です。
皆さんのクレジットカードの請求書を見てもその消費先はモノを購入よりサービス購入がはるかに多いのではないでしょうか?外食、旅行、美容やスパ、娯楽施設、カラオケ、交通費、ゴルフやスポーツ…これらはモノの消費ではありません。
インフレ率2%をどこの先進国も達成できないのはこの消費のトレンドの変化に於いてサービス価格は上昇すれど省エネ、節約、更には競争激化による価格下落が上回っていることは大きな要因でありましょう。
先日仲間たちと飲み会の二次会で金曜日の夜なのに客がほとんどいない日本食レストランになだれ込みました。そこで一つ99セント寿司をほおばりながら「悪くないね」と笑いながら飲んでいたのですが、楽しいのは仲間と飲むことであって食べ物はなんでもよかったのです。一種の飽食の時代の後にあるのは何を食べるかではなくて、誰と食べるか、飲むか、過ごすのか、なのだろうと思います。
その点に於いてツィッター、フェイスブックが社会に与えた影響は計り知れないのでしょう。2%に満たないディスインフレの原因はそこにもあるかもしれません。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 10月11日付より