AirBnB(エアー・ビー・アンド・ビー)というサービスが、日本でも急速に広がっています。これはアパートや一戸建てを旅行者にホテルのように貸し出すサービスです。日本国内では旅館業法の規制があり、物件提供者は法律的にグレーという専門家の意見もありますが、現状はニーズの拡大でマーケット規模が急成長しているようです。マンション・チラシの定点観測というサイトによれば、2015年10月1日現在、東京23区でAibBnBに登録されている物件数は全部で7,706件。ここ1か月で1,000件増加とペースが加速しています(図も同サイトより)。
提供物件数急増の理由は、収益性の高さにあります。例えば、旅行者に最も人気がある渋谷区のワンルームマンションは、1泊1万円以上で貸し出すことができ、稼働率も90%前後とほとんど満室に近い人気です。渋谷駅周辺のホテルは、1泊1室2万円前後が相場ですから、設備や立地が劣ったとしても、半値で宿泊できるのは魅力なのです。
10万円程度のワンルームを借りて、AirBnBで1万円で貸し出すことができれば、稼働率90%として、収入が27万円。管理の代行費用(収入の20%程度が相場)、AirBnBへの支払い(収入の3%程度)、光熱費などを差し引いても、毎月10万円程度の手取りが確保できるのです。
もし自分が保有している物件であれば、家賃を払う必要が無くなりますから、毎月20万円前後の収入になります。これは、通常の賃貸の倍近い収益ということになります。
初期投資としてベッドやテレビ、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、ドライヤーなどの購入が必要ですが、最初の数か月で回収できそうです。
昨年パリに行った時にAirBnBを使ってみましたが、室内は清潔、ホテルよりもずっと広くて便利な場所で、ローカルの雰囲気も味わえて、満足できました。ホテルのようなフロントサービスやルームサービスはありませんが、むしろ無い方が快適とも思えました。
しかし、AirBnBは良いことばかりではないようです。日本国内では提供されている集合マンションで、トラブルが発生しているようです。例えば、共用施設のプールやジムに、AirBnBで宿泊している外国人旅行者が大人数で入り込んできたり、借りている物件で深夜にパーティを開いて近隣住民から騒音の苦情がきたりするケースです。実際に一部のマンションでは、マンション管理規約を見直して、AirBnBを禁止することを明記しています。今後、さらに物件数が増えればトラブルも増加することになり、現状では玉虫色のルールが明確化されていく可能性があります。
東京は2020年のオリンピック開催を控え、宿泊施設の不足が指摘されています。ホテルの大量建設をしてもイベントが終われば、ニーズは縮小してしまいますからフレキシブルに対応できません。AirBnBは旅館ホテル業の経営者から見ればライバルですが、需給の調整弁の働きもするはずです。
一方的に、敵視して極端なコンプライアンスから規制を強化するだけではなく、行政が率先して安全基準などを整備して、運営者も宿泊者も安心できる体制を早く整備すべきだと思います。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2015年10月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。