「傾きマンション」再発防止策は都会と田舎で違います --- 井上 貴至

横浜市の傾きマンション問題が世間をにぎわせています。

検証や原因究明、再発防止策は大切ですが、とても危惧しているのは、法改正が行われ、居住者保護の名のもとに、”全国一律で”手続きや検査が厳格化されること

10年前、2005年の構造計算書偽造問題(いわゆる姉歯事件)では、建築基準法が改正。建築確認の申請が煩雑化・長期化したため、資金ショートを起こした建設会社が倒産したこともありました。(官製不況やコンプライアンス不況とも呼ばれています。)

今回は、そういうことがないよう歴史からしっかり学んでほしいです。

◆そもそも田舎では、偽装なんて無理
長島町のようなコミュニティが強い地域では、建設業もお互いに顔が見える関係の中で地域に密着して仕事をしており、万が一、偽装や手抜き工事を行って、それが発覚しようものなら、ネットより早い口コミですぐに広がり、二度と地域の中で仕事ができなくなります。そして、仕事だけではなく、地域の中で住みづらくなります。

→ 地域の中で、手続きや検査より厳格な与信が働いているということです。

◆都会の大企業と田舎の家族的経営では、求めているものが違う
都会の大企業は、田舎の家族的経営と比べて、株主等の意向を受けて短期的利益を追求しがちですが、田舎の家族的経営の多くは、短期的な利益よりも、家業を次の世代に引き継ぐこと、地域の中での長期的な信頼を重視しています。

◆田舎で真面目にやっている業者が割を食うのはバカみたいな話
一方、検査や手続きの厳格化の影響を受けやすいのは、事務処理を行う人材が少なかったり、資金ショートを起こしやすい田舎の中小企業です。

”全国一律”の手続きや検査の厳格化は、本当にやめてほしいです。
田舎には田舎のやり方・基準が大切です。
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(ながしま造形美術展は、地域の力が結集!”全国一律に”喝!)
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68461714.html


◆地方分権の意義とは?
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/67567848.html

<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html

「かっこいい長島」を伝えたい
編集長やってます!【長島大陸食べる通信】
http://taberu.me/nagashima/
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編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2015年10月25日の記事「横浜の傾きマンション問題で危惧する”全国一律の”手続き・検査の厳格化」を転載させていただきました(見出しはアゴラ編集部で改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。