韓国大統領府は28日、朴槿恵政権初の日韓首脳会談を来月2日午前ソウルで開くと発表した。3年半ぶりの日韓首脳会談だ(最後の日韓首脳会談は2012年5月、李明博大統領と野田佳彦首相の間)。
日韓首脳会談が実現するまで紆余曲折あったが、隣国の首脳同士が会談し、両国関係の改善に努力する機会が生まれたことを歓迎したい。
ところで、ソウルからの報道によると、日韓首脳の日程には安倍晋三首相と朴大統領の昼食会が入っていないという。俗に言うなら、メシ抜きの首脳会談という。一方、日韓中首脳会談に参加する中国の李克強首相とは31日、首脳会談後、朴大統領は夕食会を主催するという。韓国側の説明では、安倍首相のソウル訪問は実務訪問(Working Visit)だが、李首相の場合、公式訪問(Official Visit)だからだという。要するに、プロトコール上の違いに過ぎないという。
当方が食いしん坊だから言うのではないが、メシ抜きの会談では弾みがなくなるのではないか、と懸念する。韓国人は日本人以上にメシの重要性を理解しているはずだ。“全てはメシから始まり、メシで終わる”のが韓国文化の特徴ではなかったか。
「メシを食ったか」(パブ・モゴッソ 밥 먹었어?)は韓国人の挨拶言葉だ。一緒にメシを食べることを大切にする民族だ。知り合いの韓国外交官も、「君、昼の予定はどうなっている」と直ぐに聞く。当方が、「特別な予定はないです」と答えると、「それではいつもの処で食事を」ということになる。食事抜きで、韓国外交官と会って話したことは数えるほどしかない。ほとんど食事つきだ。商談でもそうだろう。食事を共にすれば、難しいビジネス問題も解決の道が見えてくることがある。
もちろん、日韓首脳会談の場合は少々事情が違うかもしれない。慰安婦問題で何らかの前進を勝ち得たい朴大統領には国内からの圧力は安倍首相より数段大きいだろう。中国の南シナ海への進出問題もある。悠長に食事などしている場合でないかもしれない。
それでもやはり昼食会のない日韓首脳の日程は残念だ。激しいやり取りがあったとしても、一緒にテーブルで食事をすれば、その雰囲気も変わる。首脳会談で議題の進展がなくても、首脳間の人間的繋がりが少しでも深まれば、次回の首脳会談に期待が出てくるし、不必要な誤解や偏見がなくなるかもしれないのだ。
韓国の聯合ニュースによると、日本側は昼食会の開催を願っていたという。安倍首相は韓国文化を知っているのだろう。首脳会談までまだ時間がある。朴大統領がプロトコールに縛られず安倍首相を昼食会に招く決断を下せば、日韓両国関係は進展すると当方は確信している。安倍さん、パブ・モゴッソ?
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。