人工知能は人間を超えるか --- 中村 伊知哉

松尾豊さん「人工知能は人間を超えるか」読みました。


東ロボくん、自動運転、Pepper、迷惑メールのフィルタリング、金融市場取引、ルンバ、Siri。東大工学系研究科でAI、ウェブ、ビッグデータを研究する筆者が広がるAIのメカニズムを解説。

AIは単純な制御プログラムのレベルを脱し、ビッグデータの機械学習とディープラーニングの大波によって、3回めのブームを迎えているといいます。

→小林雅一さん「クラウドからAIへ」にもあるとおり、ネットの普及による帰結ということでしょう。

ディープラーニングはデータをもとに何を特徴表現すべきかという技術であり、「AI研究における50年来のブレークスルー」とみます。

→バズワードではなく、進化の分岐点という見方ですね。

「人間の知能をプラグラムで実現できなかったのは、コンピュータが概念を獲得しないまま、記号を単なる記号表記としてのみ扱っていたから」

→記号を概念=シニフィエと表記=シニフィアンのセットとして扱ってこなかった。ソシュール。

80年代、10年で570億円を費やした通産省「第5世代コンピュータ」は、「時代を先取りしすぎた」。でも、「勝つために振る価値のあるサイコロだった。「そのために日本はAIに関する人材が厚い」と評価。

→そのせいで後人は苦労したと思いますが、プラス評価されるのは珍しいですね。
 ぼくは通産省第5世代コンピュータを横目で睨みつつ、電電公社の株式売却益をあてこんで郵政省で自動翻訳電話プロジェクトを立ち上げたんで、批判も評価もする資格なしであります。

「AIが自分の能力を超える人工知能を自ら生み出せるようになる時点」シンギュラリティに関し、「AIが人類を征服したり、AIをつくり出したりという可能性は、現時点ではない。」

→その説明はよくわかりませんでした。それが願望だとして、その願望は、正しいのかな?

デロイト社は、英国の仕事の35%が今後20年でロボットに置き換えられる可能性を指摘。オックスフォード大は、今後20年位内に米国の職業の半分が失われる可能性を指摘。

→多くの識者がこれをよく引くのは、その蓋然性がとても高まっているということなのでしょう。

AP通信は企業の決算報告記事を書かせるAIを14年に導入したという。「医療、法務、会計・税務というのは、最もAIが入ってきやすい領域」。

→L系大学増やしてもダメってことですか!

「教育は、データ分析によってもっと進化する分野」。

→なんですけどね。ビッグデータの教育利用はカベが厚い。医療、法務などと同様、組合・ギルドの力が強くて、データやAIはおろかITの利用が進んでませんから。

「音楽や絵画といった芸術の世界にもAIの進出は及ぶかもしれない。」映画やテレビ番組などのコンテンツ制作、ファッションや食などでもkの手法が主流になることも考えられる。」

→ぼくが一番気になるのは、クリエイティブ分野にAIがどこまで来るか、ということ。AIがヒトに残してくれる領域はあるのか?


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2015年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。