イケてる人材をスカウトする地方はメディア力が高い

新田 哲史

どうも新田です。えーと、先にJIAA界隈の方に牽制球を投げ返しておきますと、本記事では、スマホの話はしますが、ステマではありません。疑心暗鬼おつかれさまでした。

ところで、アゴラではこのところ、地方創生の最前線で奮闘されている方々に執筆陣にお入りいただいております。そのお一人で総務省から鹿児島県長島町に赴任されている全国最年少副町長の井上貴至さんが一時帰京し、転職サイトのビズリーチとの“官民コラボレーション”に関する記者会見をするというので、ご挨拶がてら行ってまいりました。

※会見で笑顔を見せるビズリーチ南社長(左)、井上副町長(中央)、土井隆さん

ヒト重視に地方活性化策シフトも実行に課題


その昔、DAIGOのお爺さんが総理をやっていた頃にふるさと創生基金といって、全国の自治体に1億円をばらまき、それを使って青森の黒石市が、やらかしで純金こけしを買ってしまうバブル伝説がございました。しかし、この20年余り、その手の「モノ重視」「カネ重視」のバラマキ策では地方活性に実効性が乏しかったことは周知の通りです。安倍政権肝いりの地方創生もバラマキの匂いは残しているものの、総務省の地方創生人材支援制度に象徴されるように、都会の高度人材とノウハウを地方の最前線に移転させ、長い目で見て持続可能性を持たせる「ヒト重視」の方針にシフトしつつあるのは、段々知られてきたところです。

ただ、実際にヒトを移転させようにも、肝心の受け入れ先で、ITやら営業やら「なんとなくこんな人ほしいな」と思っても、お金なり、告知方法なり、具体的な呼び込むノウハウが乏しいのが実情。そのまま求人案件を出したところでハロワの求人票みたいな味気のない情報を出してしまうわけですが、それでは都会の若い人には伝わりませんね。まあ、そこでビズリーチが今年始めたスタンバイという新サービスを使うと、求人の作成・公開・応募管理までフォーマット化されているので、地方の方々が無料で、しかもコンテンツをある程度、魅力的に打ち出せるようになる。ビズリーチも南社長がネットには載っていない地方に眠る求人情報を可視化して、それを糾合するプラットフォームづくりという壮大な構想を実現する上で人と情報の流れを作ることができるので、お互いウィンウィンという建て付けでございます。

スマホ×ストーリーテリングがカギ


もう一つ、メディア運営側に最近なった私としては、スマホ対応の面も興味深いわけですが、南さんによると、スタンバイを利用する求職者のスマホ利用はPCと半数になっているようです。求人側が入力したコンテンツは自動的にスマホ向けに変換できるとのことで、スマホで仕事情報を探すのが主流になりつつあるトレンド対応はマストだと感じます。

ただ、この手のツールが便利になるほど、大事になるのが人材を呼び込む側がどう自分たちのコンテンツを整理し、魅力的に打ち出せるかどうか。ある種の編集力や発信力も問われつつあると思うわけですよ。実際、井上さんは「ブランドづくりはストーリーを伝えることが不可欠」と、『長島大陸食べる通信』という地元食材を生産する過程や食べ方をカッコよく伝える雑誌の創刊を打ち出し、その編集長をも募集職種に挙げているわけですが、集落全体をストーリーテリングできるかどうか、自社メディアなり、報道機関なりを活用した総合的な“メディア力”がますます重要になると感じました。南さんも「ネットに出ている地方の求人情報で魅力的に打ち出せていないものがある」と指摘しておりました。

なお、この日の会見には長島町への移転人材(地域おこし協力隊員)第1号の土井隆さんが本物のブリを持ち込んで参集。元楽天、元ルクサという経歴から“南イズム”の継承者であるわけですが、現地では漁協が全国で初めて作った株式会社のアドバイザーに就任し、これまでの漁協がB2Bしかやっていなかったのを、ウェブマーケティングの立場からB2Cを推進するとのことで、「IT×漁師町」の座組みでどんな仕掛けを見せるのか非常に興味深いところです。
ではでは。

新田 哲史
アゴラ編集長/ソーシャルアナリスト
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