僕がアメリカに拠点を置きながら日本のスポーツ界の成長のために日本のクライアントの皆様にアドバイスをするという、ちょっと変な仕事の仕方を始めて15年が経ちます。
僕が「アウトサイダーとしての視点」にこだわっているのは、生活習慣や文化の異なる米国のスポーツビジネスと日本を比較すると、多くの違いがあり、その違いを具体的に知ると、新たな発想が沸きやすくなるからです。
弊社の会社理念のところにも書いていますが、僕はアメリカの取り組みが「正解」で、それを日本にそのまま導入しようとは思っていません。絶対的な「正解」などないですし、あるとしても、それはその国なり地域でスポーツと実際に触れている人が決めるべき話だと思うからです。地域により人は違いますから、自ずと求めるべき打ち手は違ってきます。
違うものを見ることで刺激を受け、今までになかった発想が生まれることは良くあることです。僕が15年もこのような仕事を続けてくることができたのは、そこに価値を見出してくれたお客様がいたからです。
日本を出て初めて分かったのは、想像以上に日本には言語的な断絶があることです。英語ができれば手に入れられる有益な情報は世の中に溢れていますが、日本ではなかなかそれが手に入れにくい。
世界的なトレンドと日本の動きが違っている局面というのは、スポーツビジネスに限らず少なからずあると思いますが、言語的な断絶により、なかなかそれに気づくことができない(気付くのが遅れる)というのは、事実だと思います。今やネット上の情報の約55%が英語ですが、日本語は5%に過ぎません。
別に「海外と日本に違いがある」=「日本は遅れている」とは思いません。違いを知った上で自覚的に歩みを選択していれば良いと思います。しかし、実際は違いを知らずに無自覚に選択しているケースも少なくありません。
ただ、逆に言えば、世界的な趨勢と日本との違いを丁寧に比較・整理すれば、今まで気づかなかった潜在力を発揮できる領域をまだまだ発掘できると思うんですよね。僕はそういう信念で仕事を続けてきました。
そして、ちょっと気の早い話ではあるのですが、こうした「世界の中での日本のスポーツ」という視点で日本のスポーツビジネスを俯瞰的に語れる専門家をゲストに招き、来年の2月にセミナーを開催することにしました。
■国際スポーツの現場から見えるスポーツの潜在力とビジネストレンド
~日本を出て初めて見えてきた、CSR・アクティベーション時代のスポーツビジネス~
今回は、ゲストとしてField-R法律事務所の山崎卓也弁護士と、FIFAコンサルタントの杉原海太さんをお迎えします。僕もモデレーターとして対談に参加するので3人でしゃべる感じになります。
このセミナーは個人的にとても楽しみにしているんですよね。山崎さんにお会いしたのはもうかれこれ12~13年程前になるでしょうか。当時は日本プロ野球選手会の顧問弁護士として活躍されており、今はその活動の幅を更に海外にも広げ、FIFA紛争解決室(DRC)仲裁人や国際プロサッカー選手会(FIFPro)アジア支部副代表として世界中を飛び回っています。
杉原さんは、その山崎さんにご紹介頂いた仲です。世界で10人ほどしかいないFIFAコンサルタント(日本人としては杉原さんだけ)として、世界各国のサッカー協会・リーグ・クラブのガバナンス改善、戦略立案、業務改革のサポートをされています。文字通り世界を股にかけて活躍されています。
僕の知る限り、お二人は日本人で最もグローバルに活躍されているスポーツビジネスパーソンではないかと思います。「世界の中での日本のスポーツ」を語るのには打ってつけのお二人です。
二人とも半分くらいは日本にいないのではないかという位忙しく海外を飛び回っているのですが、意外に日本で3人で良く飲むんです(笑)。で、ふたりとも国境、競技、業界インサイダー/アウトサイダーという枠を超えて様々な知見をお持ちで、3~4時間くらいあっという間に経ってしまうのですね。しかも、それが無茶苦茶勉強になるのです。
そして、お二人と話すたびに日本のスポーツ界にはまだまだ可能性があるんじゃないかなーという思いを強くするわけです。というわけで、皆様にも同じような視点からスポーツの潜在的価値を知って欲しいと思ったのが、このセミナー開催の趣旨というか、きっかけということになるでしょうか。
以下が、このセミナーに参加する上での思考の補助線になるかもしれません。
・勝利がスポーツビジネスの最高の商品ではなくなっている? ~勝てばいい時代の終焉~
・一見、スポーツビジネスと関係なさそうなCSRが重要性を増しつつある理由
・巨大スポンサーが国際競技団体にかけるプレッシャー ~アクティベーション時代のスポンサーシップ~
・五輪ほかメガスポーツイベントにおける「サステナビリティ・ビジネス」
・グッドガバナンスとスポーツ賭博・インテグリティをめぐる、国家と国際競技団体の世界的攻防
・欧米至上主義からのシフトの可能性 ~多様性の尊重は、アジア人の武器となりうるか?~
・「自分の頭で考える」時代のスポーツビジネス ~「体育」を「スポーツ」にするために
僕もモデレーターとして参加しますが、自分にとっても気づきの多いセミナーになるだろうなと今からワクワクしています。
編集部より:この記事は、ニューヨーク在住のスポーツマーケティングコンサルタント、鈴木友也氏のブログ「スポーツビジネス from NY」2015年11月5日の記事を転載させていただきました(画像はアゴラ編集部で担当)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はスポーツビジネス from NYをご覧ください。