話題の民泊ビジネス、もう少し考えてみよう

岡本 裕明

昨日、民泊ビジネスについて許可の面からのハードルについて書かせて頂きました。本件は少し書き足したいことがありますのでもう一日おつきあいください。

一昔前、日本の社会に「嫌外国人」の風潮がありました。その多くが「外国人は何を考えているかわからない」「いつもトラブルを起こす」「言葉や習慣を理解してもらえない」などなどで外国人の雇用が多い企業や工場の近隣の人たちからネガティブなコメントが数多く寄せられていました。

今回注目されている「民泊」はそのよくわからない外国人を自分の家に招き入れ、部屋のみならず、トイレや風呂、場合によりキッチンを使わせるという実に大胆なチェンジであります。正直、一般的な日本人論では全く説明できない「奇行」ともいえるべき現象であります。

思うに「民泊」ビジネスに興味あるタイプの方々は二通りで真に外国人などのゲストをおもてなししたいという層と小遣い銭稼ぎをしたいという層です。

「おもてなし希望」層は、例えばかつて外国に住んだことがあったり、外国人と交流を深めたいという何らかのモチベーションをお持ちでご家族の方を含め、理解があり、更に十分な広さの住居があるということになります。時々そのような方々が取材を受けられてメディアで紹介されていますが、さほどマーケットは深くない気がします。

現在1万件とも言われるAirbnbの大多数のホストは小遣い銭稼ぎと言い切っても問題ないかと思います。また、一部では既にホテルの様に仕立て、ホテル仕様のベッドやリネンを使い、まさにビジネスとして活動している方がいるとも聞きます。(やり過ぎて捕まった方もいるようですが。)勿論、中国人が中国人向けに貸す物件も多く、一部の集合住宅では知らぬ人が出入りすることが問題になり、規制が進んでいるところもあるようです。正に「攻防」ともいえる状況です。

Airbnbの顧客層はどうなのでしょうか?顧客平均年齢は35歳程度とされますが、民泊を積極的に利用する第一義的理由は宿泊代だろうと思います。新しい宿泊スタイルとして興味本位的なところもあると思います。つまり、世界各国の若者の安い宿泊代と旅という冒険と発見への期待とも言えそうです。

ということはバックパッカー的な顧客も当然出てくるでしょう。私は日本のAirbnbのホスト側に口を酸っぱくして申し上げたいと思いますが、外国からのお客様はかならず皆さんを唖然とさせるような使い方や要求をする人が出てくるはずです。特にトラブルになった時、やり取りができないなど安全対策が全くない点を認識すべきでしょう。また、盗難や備品の破損などに伴う損害発生の対応も必ず出てきます。外国人には日本人に理解しがたい「困ったちゃん」がけっこういる、これだけは心してください。私の25年に及ぶ海外生活とホテルビジネスを見続けてきた経験です。

私はairbnbのシステムは正直、不完全だと思っています。理由は部屋の提供者であるホストのクオリティコントロールがほとんどできておらず、単に予約システムの提供だけにとどまっているからです。

ホテル業界でも全く同様で、予約システムと運営が一体になっているホテル(直営)とホテルの看板や予約システムと運営が別物(フランチャイズ)というところがあります。前者の場合にはブランドネームにふさわしくきちんとしているホテルが多いのですが、後者の場合、クオリティにばらつきが出てしまいます。

airbnbの場合にはこの後者のケースにも至らない全くの口利きビジネスである点に於いて運営のコントロールまで行う同業他社が出てきた時、窮地に追い込まれてしまう弱点を持っています。

実は欧米では夏のバカンスの頃、家を一か月といった単位でそっくり交換する仕組みがあります。私のバンクーバーの知り合いもフランスの方と交換し、見ず知らずの人同士が見ず知らずの家にひと月、住むということをしたのですが、あまりポピュラーになっていません。これはairbnbと全く同じ仕組みなのです。旅hoは冒険と発見なのですが、人は案外コンサバティブで旅先に一定の安心も求めるのでしょう。ましてやそこが最悪だった時、ホテルならクレームをして別の部屋に入れますが、民泊ではオプションはありません。

とはいえ、airbnbという仕組みが出来てこの5年だけで350倍に成長しているということは大いに評価できます。宿泊の新しいスタイルとして更なる改善を施すと同時にライバルがより良いものを生み出し、切磋琢磨していってもらいたいと思います。

日本での普及には許可や制約上の問題が解決することが先決ですが、その上でイギリスのB&Bのようにファミリービジネスとしてきちんとやるところに淘汰されていく気がします。空室の目立つアパートを改造するということもあるでしょう。リネンや掃除、鍵の受け渡しなど片手間ではとても出来るものではないし、顧客側もラーニングカーブでより高い品質を求める様になるからです。

最後に日本の行政はあまりにも後追いで世の中の変動にキャッチアップできていません。高齢者向け住宅も厚労省と国交省の縦割りで平準化が遅れましたし、シェアハウスもいまだよくわかりません。今度は民泊です。結局何が良くて何がダメかわからず、お咎めがないと思っていたら見せしめの様に捕まる人がいる、これはチャレンジを否定しているともいえ、行政の大いなる反省と改善が必要ではないでしょうか?

前日に続き、長々とおつきあいありがとうございました。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月12日付より