どう見る、日本の景気

岡本 裕明

日本の7-9月期のGDPが事前予想の年率マイナス0.3%を下回るマイナス0.8%に留まりました。マイナスになることはコンセンサス通りで驚きはありませんが、思ったよりマイナス幅が大きかった気がします。

ただ、月曜日の朝8時半にこの発表を受けた東京株式市場ではフランスのテロの事件のインパクトが大きかったため、どれ位影響があったか図り切れませんが、意外と冷静に受け止めていたように思えます。

出てきた数字を見る限り、個人的にはさほど悲観するものではなく、世界の中の日本という経済の枠で泳いでいる、というのが印象であります。

企業の設備投資が1.3%減となったこと、および民間の在庫減が0.5%となっているあたりが指標的には一番の影響のようです。設備投資減の背景は中国や新興国を初めとする輸出相手国の景気の低迷で販売が伸びないことが理由でありましょう。つまり、日本が悪いわけではなく、どこの国も同様の問題を抱えているという点は別枠として考えなくてはいけません。

また在庫減は売れすぎて在庫が減っている、ないし、企業の在庫調整が完了しつつあるという見方で指標上はマイナスに出るのですが、先行きは明るい兆しであります。一般には在庫を一定量に保つため、その積み増し分が次期に出てくると思われ、気にすることはないでしょう。

個人消費では前期比0.5%増となってます。これをどう評価するかですが、日経あたりは「弱い」とみていますが、私はこんなものだろうとみています。グラフで見ると2012年以降、水面下と水面上(プラスサイド)を行ったり来たりしており、さほど悲観するような水準ではありません。

それよりも実質賃金が大きく回復していることに注目した方がよいでしょう。厚労省発表の実質賃金指数は2012年以降プラスになったことはほとんどなかったのですが、今年7月にプラス0.5%となって以降、3カ月続けてプラスを維持しており、四半期で見ればしっかりと水面上に顔を出してきました。

黒田日銀総裁が11月6日の会見で述べていたように日本はほぼ完全雇用の状態にあり、今後、賃金の上振れが期待できると考えています。業種により濃淡はあると思いますが、新卒者の奪い合いの状況から見ても今後、賃金上昇率がプラスサイドで安定する可能性はありそうです。

企業の稼ぐ力を見れば7-9月の決算をみる限りかなり良好と考えてよいと思います。特になかなか安定しない新興企業では7-9月期の決算に於いて前年同期に比べ39%も利益が増えています。また、東証第一部企業は5割近い増益率となっており、GDPとは裏腹にある意味、絶好調な企業業績であります。

もっとも先行きの話になるとコンサバな日系企業ですので年の半分が過ぎた時点で当初の年間予想利益の7-8割を既に達成している企業でも通期予想を変更しないところが続出しています。勿論、世界景気の下振れ懸念もありますが、予想を下回ると株価に大打撃が生じたり、銀行あたりから予想が甘い、努力が足りないと言われかねません。企業経営者にはあまり好ましくないわけで堅めの数字で抑えておく傾向がより強まっているように感じます。あまりよいことだとは思いませんが。

期待されている景気対策ですが、多少の補正予算はあるかと思いますが、金融政策には変更がないとみています。理由はGDPの下押し原因が純粋な国内景気というより輸出先の景気の不透明感や在庫調整であって金融的刺激を施すことが最善策とは思えないからです。

今後注目は本年度の税収がどれぐらい想定を上回り、先々予定される消費税増税にどのような影響を及ぼすか、ということになりそうです。私の知る限り、現状、税収は年初見込みに比べ数兆円は上乗せされそうとのことです。それを受けて国債の発行が抑えられることで国債価格の上昇のバイアスがかかるという流れかと思います。郵政三社の株価についても堅調を維持できれば第二回目以降の放出に対して税収へのプラス期待要因となります。

個人的には世界景気がすぐれない中、資源安、原油安、為替安をうまく取り込み、うまくやっていると思っています。あとは中国や新興国にどれだけ足を引っ張られないようにするか、そのあたりではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月17日付より