堅調な日米株価に見る先行き

日米の株価が堅調に推移しています。11月初め、イエレン議長が「12月利上げ本気説」を述べ、その後、10月の雇用統計が想定を大幅に上回る結果となったため、12月の利上げはほぼ確実とみる専門家が7割以上の状況となりました。

通常なら利上げは株価にとってはマイナス要因で事実、11月6日の雇用統計発表から13日までダウは670ドルほど下げました。ところがそれを底に堅調さを取り戻し、下げ幅の3分の2戻しを達成しています。

一方の日経平均はイエレン議長の声明が市場に反映された11月6日が19265円でその後、アメリカ利上げ=円安期待も手伝って20000円目前まで上昇しています。途中7連騰もありましたが、郵政3社上場と年末に向けた期待感が高まっていることもあるのでしょう。

北米のマーケットをみている限り、12月利上げは既に株価に織り込みつつあり、むしろ、目線は利上げのペースの予想に転じてくるのではないかと思います。イエレン議長は「かなりゆっくりしたスピードで」と再三述べていますので以前のようにFOMCがあるたびに利上げという状況にはならない気がします。それと以前から申し上げておりますようにアメリカの景気の良さが何時まで続くのかという疑問も当然出てきます。

住宅指標をみても「陰り」というほどではないですが、伸び率にはくたびれた感じがします。自動車の販売は完全なるピークを迎えつつあり、何時調整期に入ってもおかしくありません。

ものの見方はいろいろあるのですが、一部に「ドル安の世界景気回復説」というのがあります。世界の商品相場(資源)の需要低迷が新興国などの経済を下押ししているという解説はよく耳にすると思います。それに加えてもう一つ、実は多くの商品(資源)がドル建てで指標が作られるため、ドル高は商品相場を下押しするという特性があります。よって、ドル安に転じれば商品相場はシーソーゲームのように上昇に転じ、それが新興国経済に恵みの雨となる、というシナリオであります。

2016年の為替見通しはドル高サイクルのピークアウトとみる専門家、金融機関もあり、仮にそうであれば来年は世の中のピクチャーが変わる可能性がないとは言い切れません。特にイエレン議長の「上げる、上がる」と言い続けた利上げが本当に行われればこれはゲームチェンジャーとなるでしょう。

トロントの金融マンとやり取りしていてカナダ中銀が更に利下げする噂があると述べていたのですが、私はそれを一蹴しました。資源国の利下げは米ドル高を招き、資源価格が相対的に下がる結果を生むので逆の作用が掛かってしまうのです。氏は利下げによる消費や投資増が期待できるというのですが、ここまで利下げしたら投資や消費に対する刺激というより高齢化社会を迎えているカナダでもリタイア層などの利息収入がほとんどなくなっており消費が低迷する影響の方が大きいと考えています。

カナダドルと米ドルのベアで見ると2014年7月から今日まで約3割のドル高になっています。長期的な歴史でもそろそろピークという位置につけていますのでそのあたりの感覚を持ちつつ来年に向けての心構えをした方がよい気がしています。

日本は企業の体力がしっかりしています。アベノミクスや新三本の矢は何処でどうなっているのかわかりませんが、民間主導でよい展開を期待できるとみています。また、内部留保が高くなっていますので仮にドル安円高に転じた際には日本企業による海外企業買収などがしやすい環境になってくると思います。

今年も残りひと月半を切り、アメリカでは来週26日の感謝祭を過ぎると一気にクリスマスモードに入ります。世の中の動きを大局的に捉えながら年末を乗り越え、来年に向けた戦略を練り直す時期が到来したように感じます。

では、今日はこのぐらいで。

岡本裕明 ブログ 外から見る日本、見られる日本人 11月19日付より