地方創生。
市町村の担当者の方と意見交換することも多いのですが、その時によく質問されることがあります。
【質問】
「長島町では、具体的な施策が次から次に打ち出されていますが、我が町ではそのような具体的な施策を思いつきません。どうして、長島町では具体的な施策を思いつくのですか?」
「私の町でも今まで人口減少対策に力を入れてきました。今さら何をすればいいのでしょうか?」
これは、なかなか難しい質問ですが、
だいたい次の2つが大きな理由だと考えています。
【回答】
①1つは地方創生担当の副町長の私が、これまで全国の現場を訪ね歩いて、地域づくりのキーパーソンと深く意見交換を重ねてきたこと。その経験が今、すごく活きてきています。
イノベーションとは組み合わせること。
決して、ゼロから創造することだけではありません。
様々な事例や文脈をある程度理解しなければ、新しいアイデアはなかなか浮びません。
⇒ たまには意識して役場や町の外に出て、公務員だけではなく様々な方と意見交換することが大切だと思います。
②そしてより重要なのが2つ目。
町としては異例の副町長2人体制で、地方創生担当の私が相当自由に動き回れること。
部・課・係・・・という組織構成は、既に決められたことを進めていくためには有効ですが、新しいことを考え出すには向いていません。部・課・係・・・という組織にとらわれると、どうしても組織の所掌から、所掌の範囲内で考えてしまいます。
住民と向き合って、その人が何を困っているのか。どうすれば解決できるのか。
「人」ベースで考えていくことが重要です。
例えば、全国マイケアプラン・ネットワークの島村八重子代表が実践した「義母流デイサービス」。
近所のおばさんたちとの井戸端会議が大好きなお義母さん。ところが、足腰が弱くなり、長時間立つことができなくなりました。そのときに考えたのが「義母流デイサービス」。
おしゃべり好きなお義母さんのために、自宅前にベンチを置くことで、地域の人が自然と集まり、お義母さんが望む暮らしを実現しました。
<詳しくはこちら>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/67951233.html
介護保険担当の方は、介護保険制度に熟知しているのですが、熟知するあまり、ともすれば「要介護2だからこういうサービスを受けることができる」、「こういうサービスを使わなければできない」と、制度から考えてしまいます。
しかし、制度から考えてしまうと、新しいアイデアはなかなか浮かびません。
やはり「人」ベースで考えていくことが重要です。
⇒ 副町長を2人置くのはなかなか難しいですが、例えば、特定の課に属さず、自由に動き回る「ぶらぶら係長」を置いてみたらどうでしょうか。「ぶらぶら係長」が町の人と現場でしっかり意見交換して、その人の困りごとをどうすれば解決できるのか、掘り下げて考えてみたらいかがでしょうか。
「今さら何をすればいいのか?」
と質問される方(自治体)の多くが、掘り下げて聞いてみると、具体的には特段何もしていなかったことがよくあります。
役場の机の上だけでは、まず新しいアイデアは浮かびません。
部・課・係ということは一度忘れて、現場で町の人と向き合うことが大切だと思います。
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<井上貴至(長島町副町長(地方創生担当)プロフィール>
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68458684.html
http://blog.livedoor.jp/sekainotakachan/archives/68480758.html
編集部より:この記事は、鹿児島県長島町副町長、井上貴至氏のブログ 2015年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『「長島大陸」地方創生物語~井上貴至の地域づくりは楽しい~』をご覧ください。